第7話 ラストバトル(その1)

文字数 1,705文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。

 警察官を振り切って首相官邸を疾走するチェリー・ボーイズ。
 首相を探し出し、今度こそ「辞めて下さい」と直談判するために。

「止まりなさい!」

 後ろから警察官が僕たちを追ってきた。しかし、止まるわけにはいかない。
 僕たちの進む方向には、別の警官隊が防護盾を持って待ち構えている。

 ――首相はどこにいる?

 全力で走りながらも僕は冷静であることを心掛ける。
 チャンスは一度きりだ。失敗は許されない。

 事前情報が正しければ首相は執務室にいるはずだ。

 僕たちが突入したことは、入り口を警備している警察官から内部に伝わっている。
 首相はSPが警備している。首相はSPの誘導で避難しているかもしれない。
 でも、僕たちが目指すべきは執務室だ。

 ぽっちゃり体系のブルー(財務省の山田)がバタバタ音を立てながらフロアを走っている。
 走るのが遅いから他のメンバーから遅れている。
 追ってくる警察官にブルーが捕まるのは時間の問題だ。

 僕はブルーを助けるべきだろうか……
 いや、申し訳ないがブルーを助けていては首相には辿り着けない。
 全員揃って首相に会うのは諦めた方がいい。

 別れて首相を探すべきか……僕は走りながら他のメンバーに提案する。

「このままでは全員捕まる。バラバラに探そう!」

「そうですね」
「了解!」

 イエロー(総務省の佐藤)は「あばよー」と言いながら一人右に曲がった。
 レッド(国交省の田中)も「検討を祈ります」と左に曲がった。

 僕は二人の無事を祈った。

「僕はここまでです。後は頼みます!」

 そういうとブルー(財務省の山田)は走るのを止めた。
 ブルーは走るのに疲れたのではない。その証拠にブルーの言葉には自信が感じられた。

 ブルーは通路を歩いていた女性職員に近づくと、腰に差していた包丁を取り出した。
 どうやら人質を取って時間を稼ぐ計画らしい。

「止まれーー! 来るなーーー!」

 ブルーは女性職員の腕を掴みながら、包丁を振り回して警察官を威嚇した。

 人質となった女性職員を気にしたのか、警察官は止まった。
 そして、拳銃をブルーに向けて構えた。

「うあぁぁぁぁーーー!」とブルーは包丁を振り回しながら叫ぶ。

「凶器を確認、発砲許可を!」
 無線で確認をとる警察官。

 女性職員を人質にとったブルーと警察官の睨み合いが続く。
 じりじりとブルーに近づく警察官。

 “パンッ”

 乾いた音がした。

 警察官が威嚇射撃したのか?
 ブルーが撃たれたのか?

 後ろを振り返ることができない僕は何が起きたのか分からない。
 僕はブルーの無事を祈りながら全力で走った。

 長い通路を真っすぐ走るのは僕(ピンク)とグリーン(防衛省の鈴木)。
 グリーンはコスチュームに附属されたプラスチック銃を手にしている。
 おもちゃの銃ではあるが、警察官に銃で武装していると錯覚させようとしている。

 右側からパンッという音が聞こえた。
 そっちはイエロー(総務省の佐藤)か……。

 今度は左側からパンッという音が聞こえた。
 そっちはレッド(国交省の田中)だ。

 ――二人は無事だろうか?

 グリーンはスピードを落とすことなく防護盾を持った警官隊に向かって走っていく。
 僕はグリーンに遅れないように後を追う。
 ここを越えれば首相の執務室だ。

 “パンッ”

 また乾いた音がした。
 正面の警官隊がグリーンを射撃した。

 僕のマスクに血しぶきが飛んだ。グリーンの血だ。
 弾丸がグリーンに当たった。どこを撃たれたかは分からない。

 ――人を狙って発砲とか……冗談だろ?

 流血した足を抑えながらも前進するグリーン。

 “ガンッ……ガンッ……ガンッ”

 警察官の防護盾をプラスチック銃で叩き始めた。
 警察官は防護盾が邪魔でグリーンを捕獲できない。

「ピンク、今のうちに!」

 グリーンは僕を先に行かせるために、警察官を足止めしている。
 僕が警官隊の側を走り抜けたら「シュウマイ奢って下さいね」と声が聞こえた。

「おおよ!」僕は親指を立てて言った。

<その2に続く>
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