第2話 福沢の怒りを鎮め隊(その2)

文字数 942文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。


 周りを見渡したら、みんな福沢に同情しているように見えた。
 茜は再びホワイトボードを叩いた。男性4人はビクッとして茜に注目した。

「さて、みんなに聞いておきたいことがある。この中にKO義塾大学の出身者はいるか?」

 茜の質問にそっと手を挙げた佐藤(総務省)。佐藤はオドオドしていた。
 そんな佐藤の前に茜は紙を置いた。福沢諭吉の写真だった。

「佐藤、お前はコレを踏めるか?」

 踏み絵だ。
 佐藤は茜の質問の趣旨を理解しきれていない。

「どういうことでしょうか?」

「お前は日本国家のために働くのか? それとも、福沢の一派として働くのか? 要は、お前の意思を見せろ、ということだ」

 返答に困る佐藤に「無理なら、この任務から降りろ」と茜は静かに言った。
「福沢の怒りを鎮め隊」は日本国家を守るための組織。福沢に害をなす任務も含まれるかもしれない。茜は、佐藤が福沢よりも日本国家を優先できるかを問うているのだ。

「中途半端なヤツは茜先輩の前から消えろ!」

 佐藤(総務省)につかみかかる山田(財務省)。山田は福沢の写真を踏みつけた。

「そうだ。国家を守るためなら親でも敵だ!」

 鈴木(防衛省)も福沢の写真を踏みつけた。
 田中(国交省)も後に続いた。

 この流れに逆らうわけには……僕も踏まないといけない。
 僕は福沢の一派ではない。申し訳ないと思いながらも、しかたなく福沢の写真を踏みつけた。

「さて、佐藤。もう一度問う。お前は私のために働くか? それとも、福沢のために働くか? どっちだ?」

 茜は再び佐藤に質問した。国家=茜になっているのが気になるのだが。
 佐藤は茜を正面から見た。

「俺は茜先輩のために働きます!」

 佐藤は勢いよく福沢の写真を踏みつけた。

「よし、佐藤。君もビーチ・ボーイズのメンバーだ!」

 茜は笑顔で佐藤に言った。
 その笑顔は、僕から見てもとても素敵だった。

 佐藤はとても嬉しそうだった。

 それよりも……僕が気になるのはそっちではない。

 ――ビーチ・ボーイズ? なにそれ?

 僕は前回の「チェリー・ボーイズ」の二の舞になることを懸念している。
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