第4話 福沢の像をぶっ壊せ!(その2)

文字数 1,142文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。また、本話には少し過激な表現が含まれます。決してマネしないで下さい。


「マスク取れよ!」

 急に大声を出したスーツ姿の男性。レッド(国交省の田中)の体がビクッと動いた。
 しかし、当のブルー(財務省の山田)は動かない。日常的に国会議員に詰められているブルー(財務省の山田)はスーツ姿の男性の恫喝には屈しない。
 ブルーは静かに「嫌です」と言った。

「マスクを取れない理由があるのか?」

 ブルー(財務省の山田)は少し考えた後、スーツ姿の男性に説明を始めた。

「僕はビーチ・ブルーだ。マスクを外すとビーチ・ブルーではなくなる」
「意味分かんねーよ」
「僕にとって今が本番なんだ。そうだな……もし彼ら(アメフト部員)が試合をしている最中、あなたは彼らにヘルメットを外せと言いますか?」
「言うわけねーだろ! 試合中にヘルメットを外したらケガするだろ」
「そうですよね? それと一緒です。僕はビーチ・ブルーを演じている間はマスクを取れない。そういうことです」

 よく分からない理屈でスーツ姿の男性を論破しそうなブルー(財務省の山田)。
 国会議員に詰められる度に、そうやって乗り切っているのだ。

「なに?」

 僕たちが先に進もうとしたら、スーツ姿の男性が聞こえた。後ろのアメフト部員がスーツ姿の男性に耳打ちしている。
 僕たちが福沢像を破壊しに来たことがバレたのか?
 緊張しながらスーツ姿の男性の様子を窺うビーチ・ボーイズ。

「うちの学校には特撮サークルはないらしい。お前ら、ニセモノだな?」

 スーツ姿の男性に僕らが部外者であることが気付かれた。でも、僕たちの目的まではバレていない。

「いやー、最近大学に申請したばかりなので、ホームページには情報が出てないのかもしれませんね」

 必死に誤魔化そうとするブルー(財務省の山田)。往生際が悪い。

「じゃあ、学校に電話して確認してやるよー」

 スーツ姿の男性の指示でアメフト部員がスマートフォンを手にした。

 詰んだ……ここらが潮時だ。
 僕は覚悟を決めた。

「ブルー、走れ!」

 僕はそう叫ぶと福沢の像を目指して走り出した。
 他のメンバーも散り散りに走り出す。

「まてやーーーー!」

 周囲に集まった大学生の群れが邪魔して、アメフト部員は本来の力を発揮できない。
 僕たちはアメフト部のタックルをかわしながら走った。

「はぁ……はぁ……」

 運動不足の僕はすぐに息切れした。けど、足を止めるわけにはいない。とにかく走り続けた。
 福沢の像が見えた。もう少しだ。
 僕たちが福沢の像に近づいた瞬間、“カンッ、カンッ”と金属音がした。

「痛っ!」

 突然、隣を走っていたグリーン(防衛省の鈴木)が叫んだ。

<その3につづく>
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