第5章の補足

文字数 555文字

 企業が苦境に立たされた時に、日本の経営者はギリギリまで頑張ろうと思うことが多いです。一方、投資家(株主)や債権者(銀行)からすれば、早めに倒産又は再生手続に入ってもらった方が、回収額が増えるし、スポンサーが見つけやすくなるため、ありがたいのです。

 例えば、図表36-3のように倒産していく企業の現預金残高は期間が長引くほど減少していきます。欧米企業の倒産時期は日本企業よりも早いため、日本企業の回収率が低くなります。つまり、日本企業は諸外国と比べても頑張り過ぎなのです。

【図表36-3:倒産時期と回収率】

 


 少し話を変えると、CDS(Credit default swap)というクレジット・デリバティブがあります。CDSの取引価格は、その企業の倒産リスク(デフォルト率)や回収率(クレジットイベント(債務不履行)発生時に回収できる元本金額の割合)などを基にします。
 CDSにおける日本企業(大企業)の回収率は他の先進諸国(大企業)の回収率よりも5%~10%低い。これは、日本企業は倒産までの間に頑張りすぎて、倒産時に回収できる資産が少ないことが理由です。大企業でさえそうなので、中小企業の回収率はもっと低くなるはずです。

 日本の経営者はそんなに頑張らなくてもいいのにな……というのが筆者の素朴な印象です。
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