第1話 住宅ローンは固定派? 変動派?(その3)

文字数 1,391文字

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 ちなみに、金利・返済年数による返済額合計を元本に対する比率として示したものが図表30-2だ。例えば、30年間5%の固定金利で借りると返済額の合計は元本の195%になる。

【図表30-2:金利・返済年数による返済額合計の元本に対する比率】



 当たり前のことだが、返済年数の少ない方が返済額は少なくなり、金利が低いほど返済額は少なくなる。
 いまアメリカで30年間の住宅ローンを組むと、元本の約2.5倍の支払が必要だ。日本の変動金利の場合は108%ですむ。
 日本で5,000万円を変動金利で30年借りたら約5,400万円の支払い、アメリカで借りたら1億2,700万円の支払いが必要となる。
 この点から、日本の低金利がいかに住宅取得に得なのかが分かるだろう。

 **

「固定金利にすると2,000万円近く増えるのかー」
 新居室長は薄々感じていたものの、金額を知ってショックを受けている。

「そうみたいですね」
「2,000万円あったら、もっといいマンション買えるよね?」
「そうですね」
「住宅ローンを固定金利で借りたつもりで高いマンション買おうかな。〇〇ガーデンヒルズ、買えるかな?」
「どうでしょうね……」

 新居室長は考えている。

「固定金利で30年借りたら、金利が2.5%だから元本の143%を支払う……」
「そうですね」
「固定金利で20年借りたら金利は2%くらいかな?」
「それくらいですかね」
「固定金利で10年借りたら金利は1.5%……」

 新居室長は考えている。

「思ったんだけどさー」
「何ですか?」
「固定金利で借入しても、途中で借換えしたら金利下がるよね?」
「金利を固定する期間が減りますから、金利も下がりますね」
「10年ごとに借換えしていけば、固定金利でも30年固定金利で借り続けるよりも返済額は少なくていい」

※この場合、返済額合計は元本の138%になります。

「当初20年間だけ固定金利2%で借りて、ラスト10年は変動金利にしたら……元本の131%」
「どうしたんですか?」
「当初10年間だけ固定金利1.5%で借りて、ラスト20年を変動金利にしたら……元本の122%」

 新居室長は考えている。

「変動金利をどれだけ長くするかって、チキンレースと同じなんだね」

 よく分からないが、新居室長は何かを悟ったようだ。


「頭金を2,000万円出すとして……住宅ローンを7,000万円とする。9,000万円だと〇〇ガーデンヒルズは難しいかな」
「そうかもしれませんね」
「一人だと難しいか……。もし、志賀くんが住宅ローンを7,000万円借りてくれたら……二人で1億6,000万円。何とかなるんじゃない?」
「何とかなるかもしれませんね……えぇ? 僕も出すんですか?」

**

 そろそろ飽きてきた茜が「仕事無いんだったら、帰ってもいいっすか?」と呑気に言った。

「そうですよ。仕事しましょうよ! 今日の案件は何ですか?」僕は茜に乗っかる。

 新居室長はしかたなく新しい案件の説明を始めた。

「今回はゼロゼロ融資よ。返済できない会社が増えてきたから、政府として対策を考えないといけないの」
「へー、ゼロゼロ融資ですか」

※ゼロゼロ融資とは新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で行った融資のことです。

 やっと、仕事が始まった。
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