第6話 相続時精算課税で解決できないかな(その1)
文字数 1,436文字
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
茜に論破された僕。悔しかったから、別の案を提案することにした。
「贈与税の特例で相続時精算課税ってあるよね。これを空き家対策に利用するのはどう思う?」
僕は茜に尋ねた。
※相続時精算課税とは、受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税します。
なお、贈与財産の価格が2,500万円を超えた場合は、その額に対して一律20%が課税されます。
贈与税および相続税がゼロになるのではないため節税効果はありません。あくまで、課税の繰り延べ制度と理解して下さい。
「生前贈与ってこと?」と茜は僕に確認する。
「そうだよ。今は贈与税が発生しない上限が2,500万円だけど、上限をなしにするんだ」
「へー」
「まず、相続税と比べて贈与税は税率が高い。だから、なるべく贈与はしたくないとみんな思ってる」
「まぁね」
「相続時精算課税は2,500万円を超えたら、20%の納税が必要になるよね?」
「そうだね。相続税評価額の高い不動産だったら、納税額が大きいね」
「例えば、評価額1億円の不動産を贈与したとしたら1,500万円の納税が必要。大きいよなー」
※(1億円-2,500万円)×20%=1,500万円
「不動産を売却したお金で払えばいいんじゃない?」
「まあ、そうなんだけどさ。上限なしにした方が、利用する人が増えるでしょ」
「どうだろうね。『相続空き家の3,000万円特別控除』の前倒しよりもマシだとは思うけど。垓でシミュレーションしてみる?」
僕が新居室長の方を見たら「やってみたら」という顔をしていた。
***
ここで、参考までに贈与税の税率および控除額を掲載しておこう。下記は直系尊属からの贈与の場合の税率(特例税率)および控除額だ。直系尊属以外からの贈与の場合は特例税率よりも高い税率(一般税率)が課される。
【図表11-2:贈与税(特例税率)の税率】
※課税価格は基礎控除(110万円)を差し引いた後の金額です。表中の200万円とは、贈与の金額が310万円を意味しています。
例えば、贈与財産の価格が5,000万円の場合、贈与税は以下のように計算する。
贈与税額=(5,000万円-110万円)×55%-640万円=2,049.5万円
相続人1人、基礎控除3,600万円(=3,000万円+600万円×1人)として、相続財産5,000万円の相続税を計算すると以下の通りだ。
相続税額=(5,000万円-3,600万円)×15%-50万円=160万円
贈与税の税率は相続税と比較すると高いため、贈与するよりも相続した方が税額は少なくなる。
相続時精算課税制度は、被相続人から相続する前に贈与を受けるものの、税額は相続時に確定する制度だ。贈与時に一時的に納税する金額は以下のように計算する。
一時納税額=(5,000万円-2,500万円)×20%=500万円
しかし、相続税は160万円であるから、被相続人が死亡し、相続税を申告する際に既納付額500万円との差額340万円の還付を受けることになる。
ちなみに、贈与税、相続税、相続時精算課税の税額、納付時期を図示したのが図表11-3だ。
【図表11-3:贈与税、相続税、相続時精算課税の関係】
<その2に続く>
茜に論破された僕。悔しかったから、別の案を提案することにした。
「贈与税の特例で相続時精算課税ってあるよね。これを空き家対策に利用するのはどう思う?」
僕は茜に尋ねた。
※相続時精算課税とは、受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税します。
なお、贈与財産の価格が2,500万円を超えた場合は、その額に対して一律20%が課税されます。
贈与税および相続税がゼロになるのではないため節税効果はありません。あくまで、課税の繰り延べ制度と理解して下さい。
「生前贈与ってこと?」と茜は僕に確認する。
「そうだよ。今は贈与税が発生しない上限が2,500万円だけど、上限をなしにするんだ」
「へー」
「まず、相続税と比べて贈与税は税率が高い。だから、なるべく贈与はしたくないとみんな思ってる」
「まぁね」
「相続時精算課税は2,500万円を超えたら、20%の納税が必要になるよね?」
「そうだね。相続税評価額の高い不動産だったら、納税額が大きいね」
「例えば、評価額1億円の不動産を贈与したとしたら1,500万円の納税が必要。大きいよなー」
※(1億円-2,500万円)×20%=1,500万円
「不動産を売却したお金で払えばいいんじゃない?」
「まあ、そうなんだけどさ。上限なしにした方が、利用する人が増えるでしょ」
「どうだろうね。『相続空き家の3,000万円特別控除』の前倒しよりもマシだとは思うけど。垓でシミュレーションしてみる?」
僕が新居室長の方を見たら「やってみたら」という顔をしていた。
***
ここで、参考までに贈与税の税率および控除額を掲載しておこう。下記は直系尊属からの贈与の場合の税率(特例税率)および控除額だ。直系尊属以外からの贈与の場合は特例税率よりも高い税率(一般税率)が課される。
【図表11-2:贈与税(特例税率)の税率】
※課税価格は基礎控除(110万円)を差し引いた後の金額です。表中の200万円とは、贈与の金額が310万円を意味しています。
例えば、贈与財産の価格が5,000万円の場合、贈与税は以下のように計算する。
贈与税額=(5,000万円-110万円)×55%-640万円=2,049.5万円
相続人1人、基礎控除3,600万円(=3,000万円+600万円×1人)として、相続財産5,000万円の相続税を計算すると以下の通りだ。
相続税額=(5,000万円-3,600万円)×15%-50万円=160万円
贈与税の税率は相続税と比較すると高いため、贈与するよりも相続した方が税額は少なくなる。
相続時精算課税制度は、被相続人から相続する前に贈与を受けるものの、税額は相続時に確定する制度だ。贈与時に一時的に納税する金額は以下のように計算する。
一時納税額=(5,000万円-2,500万円)×20%=500万円
しかし、相続税は160万円であるから、被相続人が死亡し、相続税を申告する際に既納付額500万円との差額340万円の還付を受けることになる。
ちなみに、贈与税、相続税、相続時精算課税の税額、納付時期を図示したのが図表11-3だ。
【図表11-3:贈与税、相続税、相続時精算課税の関係】
<その2に続く>