第87話

文字数 615文字

 そんな声も誰も聞きはしない。民主主義は完全に死んだ。
「くそー、昨日休まなければ……」
 見ると、一人の男子が梨花と同じように肩を落としている。どうやら、彼も梨花と同じ立場らしい。
「あなたも?」
 なんとなく声をかけると、彼もすぐに察したらしい。幽鬼のような顔でうなずく。
「参ったなぁ」
「まったくね」
 ひとしきり嘆き合った後、彼がぽつりと言った。
「いっそのこと、文化祭を潰してしまわないか」
「過激な発言ね」
「どうせ、毎年、お化け屋敷や喫茶店といった個性も何もない出し物が並ぶだけの文化祭だ。今年だけなくなったとしても、誰も困らないだろ。一方で、潰れれば俺たちは助かる」
 彼は熱に浮かされた瞳で、そう言った。
「でも、具体的にはどうするのよ。犯罪は嫌よ」
「簡単なことだ」
 そして、彼は計画を話し始めた。


 計画は成功した。
 彼らはある教師の不正を暴いたのである。学校にいる教師は数十人。それだけいれば、一人は不正に手を染めている。その教師の不正は全国ニュースになり、当然、その騒動で文化祭の開催も立ち消えになった。
「やったわね」
「ああ」
「これで、受験勉強に専念できるわ」
「僕もさ」
 むろん、その不正を暴くのに文化祭の準備以上の労力を費やしたため、彼らは受験に失敗した。


『最新ゲーム』

「これが、ドロクエのシリーズ最新作、ドロクエ51か。聞くところによると、どうやら最新の技術が使われた画期的なゲームらしい。さっそくプレイしてみるか」
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