第81話

文字数 620文字

「そ、それはね、流行だからよ」
「流行?」
 あたしの言葉に、天童寺くんは訝しげな顔をする。
 あたしは畳みかけるように、
「そう、流行! いま、女子の間では男子トイレで立ち小便するのが流行ってるの!」
「そ、そうなのか?」
 ヤバイ、若干引いてるかも。でも、もう後には引けない
「そうなの! 男女平等が叫ばれてる世の中だからね、トイレも平等に使わなくちゃ、ってことで」
「そうか、じゃあ、おまえは男じゃないんだな」
「そうよ! 当たり前じゃない!」
「そうか……」
 天童寺くんは残念そうに、
「実は俺、ホモなんだ。だから、お前とは付き合えない。別れよう」
 そう言った。
 え、な、なに、この展開?
「ま、待って! 本当はあたし、男なの!」
「え、やっぱりそうだったのか」
「そうなの、だから」
「実は、俺がホモってのは嘘だ」
「え……?」
「お前に本当のことを言わせるためにな」
 な、なんてこと、あっさり彼の嘘に引っかかってしまうなんて!
「じゃ、じゃあ、これでお別れなの、あたしたち」
「いや、実は、俺はバイだ! だからお前とも付き合える」
 て、天童寺くん!
 あたしは、声を震わせて彼に告げた。
「いや、バイは無理だわ。別れましょう、あたしたち」




『箱』【るうね→りきてっくす】


 数年前の引っ越しの際に、物置にそのままになっていた段ボール箱を整理しようと、僕は朝から庭の物置で作業をしていた。
「なんだ、これ……?」
 見覚えのない箱。
 虹色に輝くそれを僕は手に取った。
 そのとたん。
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