第3話

文字数 1,153文字

「ゆでたまごを入れたって、どこに?」
 私がそう問うと、彼女はめそめそと、
「は」
「は?」
「鼻の穴……」
 何を馬鹿なことしているんだろう、と私は親友の頭を疑った。この暑さで、頭がいかれたのかしらん。
「分かったわ。すぐに、そっちに行くから待ってなさい。いま、自宅ね?」
 彼女の肯定の返事を受け取り、私は身支度を整えてから車に飛び乗った。十分ほどで、彼女のマンションに着く。部屋のインターホンを鳴らすと、彼女が飛び出てきた。
「美佐子!」
「望美、大丈夫?」
 彼女は何度もうなずき、私を部屋の奥へと招き入れる。そこに見知らぬ男の死体が転がっていた。その鼻には、二つのゆでたまごが入っている。
「なにやってるの!」
 思わず、私は彼女を怒鳴りつけた。
「ゆでたまごを入れるのは、尻の穴だって言ったでしょ。こんな初歩的なミスをして」
 私が教えた痔によく効く民間療法である。こともあろうに、鼻と尻の穴を間違えるとは。
「痔の治療に病院へ行くのが恥ずかしいって言うから、わざわざこの治療法を教えたのに」
 望美は泣きながら、ごめんなさいと謝る。その仕草が、女性の私から見てもかわいい。
 私は、はあ、とため息をつき、
「分かったわ。とりあえず、この死体は処分して、新しい死体を持ってくるから。今度は間違えないでよね」
「ごめんね、美佐子」
 望美はぺろり、と舌を出す。こういうところが憎めないんだなぁ。


『宇宙戦争』【るうね→りきてっくす】

 会議室に集まった面々は一様に苦い顔をしていた。
「まさか、こんなことになるとはな」
「映画ではよくある話だが、現実に起こるなんて洒落にもならん」
 それは宇宙人の侵略に対して、どうすべきかという会議だった。一年前、突如として地球に宇宙人が襲来。瞬く間に世界各地で爆撃があり、ほとんどの国は滅んでいた。もう人が住んでいるのは、この日本のみである。
「それにしても、宇宙人の目的は何なのだ」
「やはり、地球の占領ではないのか」
「それにしたところで、こんな焼け野原にしてしまっては、占領する価値もないだろう」
「奴らの科学力があれば、復興も簡単なことなのかもしれん」
「くそっ、奴らから地球を守る方策はないのか」
 そう言っても、誰も応えない。いままで、あらゆる方法を試してきたのだ。核ミサイル、レーザー、細菌兵器や化学兵器に至るまで。もちろん対話を促しもしたが、宇宙人たちの反応はなかった。
 と、その時である。
 一人の科学者然とした男が立ち上がって、言った。
「方法ならある」
「なんだと!」
 男の言葉に、皆、色めき立った。
「それはなんだ、早く言え!」
「せっつくな。これは宇宙人の目的にも関係すると思われる。非常にデリケートなことだ、いいか……」
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