第78話

文字数 1,136文字

「はい、ストップ」
 先生がノートパソコンを操作すると、映像が一時停止した。
「じゃあ質問です。ここで彼女は何と言ったでしょう? はい、分かるひとー」
 誰も手を挙げない。
「んー、分からないのか? ちゃんと予習してきたやつは?」
 やはり、誰も手を挙げない。
「仕方ないな、じゃあ……」
「はい」
 そこで、学園一のとんち者である吉四六が手を挙げた。
「お、広田さすがだな。じゃあ答えてみろ」
「はい、『うんこ食べたい』です」
 途端に教室がざわつきだす。
「まさか、なぁ」
「女がうんこなんて言うか?」
「しかも花火と関係ないし」
 ざわつく生徒たちを制して先生が言った。
「よし正解!」
「えーマジかよ」
「じゃあ、映像の続きを見てみようか」
 先生がノートパソコンを操作すると、映像のつづきが流れた。

「うんこ食べたい」
「勝手に食ってろ!」
 男のアッパーカットが炸裂し、女は夜空へ舞いあがった。



『ピーッ』【りきてっくす→るうね】


〈これは若者四人が都内某所にある心霊スポットで肝だめしをしたときの様子を撮影したものである〉

うわ、なか真っ暗……
そこ割れたガラスあるから踏むなよ
…………
なんかさ、外からみたらボロいけど、なかそうでもなくね?
うん、思ったほど荒らされてない
てゆーか、めっちゃ生活感あるじゃん
でもさ……この家って、ピーッ なんだろ?
え、ピーッ なの? それシャレになんないじゃん
…………
ここって、子供部屋かなあ……
見て見て、ほら、ランドセル置いてあるっ
ここやばいって、他の部屋行こうよ
あ、ビビってるう
うるさいよ、ピーッ じゃないんだから
キャハハ、ピーッ とか言っちゃってマジウケるう
…………
おっ、風呂場みっけ。ちょっと入ってみようぜ
なんか焦げ臭くね?
やばいよ、やめときなよ
暗くてなんにも見えない。ねえ、ピーッ くん、ちょっとこっち照らしてみてくんない
げっ、浴槽んなか髪の毛散らばってる
うげえ、ちょーキモい。なにこれっ
ザザザザザザザザザザザザザザザザザッ
そういえばこの家ってさ、たしか風呂
ザザザザザザザザザザザザザザザザザッ
って言ってなかった?
え、それマジなの?
マジマジ、ネットで一時話題になってたもん
あ、窓んとこに盛り塩してある
やっぱマジじゃん!
ぷっ、きゃはははははっ
やだ、ピーッ ったら突然笑いだしてなによ?
ねえ、もう風呂場から出ようよ。なんか変なにおいするし
あっ!
…………
なになに?
声、聞こえた。ほら……
えっ、うそ
ちょっと冗談やめてよ
でも、ほら
…………
……なにも聞こえ
わっ
きゃあっ
ピーッ
おい、早く、出ろ出ろ出ろ出ろっ
やばいって、ここマジやばいって
マジマジマジマジ
早く早く早くーっ
きゃあああっ
ピーッ 待ってよゥ、ねえ待ってったらァ

〈お分かりいただけただろうか……それでは、もう一度ご覧いただこう〉
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