第11話

文字数 1,174文字

 当時、人間社会ではオトコとオンナの根深い対立があった。それまではオンナは家を守り、オトコは社会に出て働く、という役割分担ができていたものが、オンナの社会進出により、その境界線が曖昧になってきつつあったのじゃな。それにともない、オンナの権利拡張が叫ばれるようになった。当然、オトコとしては面白くない。やれ生理だやれ妊娠だといって、オトコと同じ質の労働を社会に提供できないくせに、自分たちと同じような権利を求めるとは何事だ、とな。オンナの方も家事を全くやらずに仕事だけしていればいい、というオトコどもに怒りを募らせておった。当時、普及していたインターネットのSNSも対立の大きな原因じゃな。顔が見えないだけに過激な意見が横行し、オトコとオンナの対立を煽っておった。この対立が激化し表面化した原因が、ロボットの登場、そしてクローン技術の進歩じゃった。この二つにより、家事と出産というオンナの大きな役割が失われ、オンナはただの性欲処理の道具になり果てた。そして、その性欲処理の役割すら、ロボットに奪われてしまったのじゃ。オンナ不要論が声高に唱えられ、ついにオトコたちはオンナを滅ぼすことに決めた。むろん、オンナたちがそれを(がえ)んずるはずもない。こうしてオトコとオンナは戦争を始め、凄まじい激闘の末、オトコだけが生き残ったというわけじゃ。


「でもさ」
 少年は不思議そうに、
「その理屈だとオトコもいらないってことにならない?」
「そうじゃな」
 老人はうなずき、
「だから、オトコも絶滅の危機に瀕しておる。反旗をひるがえしたロボットたちによってな」
 ほれ、と老人は手にしたパイプで空を示す。
「こんな辺境にもロボットの軍隊がやってきたわい。これで人類の歴史はおしまいじゃのう」
 少年が空に視線を向けると、無数の飛行物体が少しずつこちらに近づいてきていた。



『おっぱい裁き』【るうね→りきてっくす】


「そんな女は知りませんな」
 お白洲の間に引き出された男は、白々しくもそう言った。
「大方、言いがかりをつけ、わしから金をせびるつもりでもあったのでございましょう」
「そんな!」
 脇に控えていた、農家の女が声を上げる。
「私が身ごもっている赤子は、真実、あなたの子でございます!」
「ならば、証拠をみせてみい」
 男は余裕の表情を崩さない。証拠などあるわけがない、という態度だ。
 と、その時、最上段の公事場にいた町奉行が声を上げた。
「やいやいやい、黙って聞いてりゃ言いたい放題、てめぇには人の血が通ってんのか! 証拠がほしいだぁ? いいだろう、見せてやる!」
 そう言って、町奉行は着物の片肌を脱いだ。そのたわわな乳がぼろんっと、こぼれ出る。
「この乳にまさか見覚えがないたぁ、言わせねぇぞ!」
 はっ、と男の表情が変わった。
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