第71話
文字数 550文字
その時、隣の部屋から、すうっと何かが入ってきた。
「うわっ」
「ああ、驚かせてしまいましたか、すみません」
見ると、満面に髭をたくわえたムサい男が、俺と同じようにぷかぷかと宙に浮かんでいる。よく見ると、隣の部屋の住人だ。その体がうっすらと透けているところを見るに、どうやらこいつも幽体離脱の最中なのだろう。
「あなたも幽体離脱中のようですな」
「うむむ、どうやら君もか」
と、そんなことより。
「あの寝たばこの火をどうにかしなければ。このままでは、火事になってしまう」
「問題ありませんよ」
と、男は涼しい顔。
「もう全て手遅れですから」
「え、どういうことだ?」
「いま、この世界は我々が見ている走馬灯のようなもの。つまり、少し前の世界なのです」
「む、つまり、本当の我々はもう死んでいる、と?」
「そういうことになりますな」
すまない、と俺は頭を下げた。
「どうやら、俺の寝たばこのせいで、君まで巻き込んでしまったようだ」
「何を言ってるんです?」
きょとんとして男は、
「世界は核戦争によって滅んだのですよ?」
そう言った途端、窓の外で凄まじい光が――。
『メール』【るうね→りきてっくす】
メールの着信音が鳴ったので、背広の内ポケットからスマホを取り出した。
「なになに……」
『俺はもうだめだ。最後の頼みがある。実は――』
「うわっ」
「ああ、驚かせてしまいましたか、すみません」
見ると、満面に髭をたくわえたムサい男が、俺と同じようにぷかぷかと宙に浮かんでいる。よく見ると、隣の部屋の住人だ。その体がうっすらと透けているところを見るに、どうやらこいつも幽体離脱の最中なのだろう。
「あなたも幽体離脱中のようですな」
「うむむ、どうやら君もか」
と、そんなことより。
「あの寝たばこの火をどうにかしなければ。このままでは、火事になってしまう」
「問題ありませんよ」
と、男は涼しい顔。
「もう全て手遅れですから」
「え、どういうことだ?」
「いま、この世界は我々が見ている走馬灯のようなもの。つまり、少し前の世界なのです」
「む、つまり、本当の我々はもう死んでいる、と?」
「そういうことになりますな」
すまない、と俺は頭を下げた。
「どうやら、俺の寝たばこのせいで、君まで巻き込んでしまったようだ」
「何を言ってるんです?」
きょとんとして男は、
「世界は核戦争によって滅んだのですよ?」
そう言った途端、窓の外で凄まじい光が――。
『メール』【るうね→りきてっくす】
メールの着信音が鳴ったので、背広の内ポケットからスマホを取り出した。
「なになに……」
『俺はもうだめだ。最後の頼みがある。実は――』