第27話

文字数 853文字

「与助よ。明日、お前のもとを一人の娘が訪れます。その娘を嫁にしなさい。その娘はひどい醜女だが、一年、その娘と添い遂げれば大層美しい娘になりますからね」
 そう言って、狐は消えた。
 目を覚ましてから、あの夢が現実なのか、それともただの夢なのか、はかりかねていた与助だった。夕方になって、与助の家に一人の娘がやって来た。
 狐の言っていた通り、ひどい醜女で、与助でさえ目を背けたくなるほどの容姿であった。
「稲荷さまのところより参りました。これからよろしくお願いいたします」
 そうして、与助と娘の共同生活が始まった。
 娘は外見はともかく、気立ては良く、またよく働いた。
 だが、やはりどうにもその外見が、与助は気になって仕方ない。近所の者は、ほれ、あれは鬼瓦の夫婦じゃ、と囃し立てる。
 そんな声を与助は気に病んだが、すぐにこう思い直す。
 一年経てば、と。
 そうして、一年が過ぎた。
 が、いっこうに娘の姿は変わらない。
 ある時、とうとう与助はこう言った。
「なあ、お前。いったい、いつになったらお前の容姿は美しく変わるのだ」
 それを聞いた娘が悲しそうな顔で、
「ああ、与助さま。ついにお分かりになりませんでしたか。容姿のことをさんざん言われてきたあなたが何より一番、容姿というものを気にしており、わたしの内面を見つめてくれていなかったということに」
 そう言って、娘は美しい容姿に姿を変えると、そのまま消えていってしまった。
 後には、呆然とした与助が残されるばかり――。


『告白』【るうね→りきてっくす】

「あなたが好きです」
 彼女は言った。
 たしかに、言ったんだ。


「え、何のこと?」
 彼女から告白を受けた翌日。
 僕が彼女に告白の返事をしようとすると、彼女は不思議そうな顔で、そう言った。
「え、だって、昨日……」
 僕が昨日のことを口にすると、
「言ってないよ、そんなこと。夢でも見てたんじゃないの?」
 彼女は半眼で、僕を軽くにらむと、そのまま次の授業の準備を始めた。
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