第24話

文字数 840文字

「フフ、現代物理学の常識を根底からくつがえしてやるわ……」
 私はまず、K大の高エネルギー物理学研究所へメールを送った。
【アインシュタインの特殊相対性理論に対する反実在性を証明してみせますので、一度検証してください】
 まったく相手にされなかった。
 しかたなくハードルを下げ、日本SF作家クラブへメールを送った。
【光速を超えて移動できる物体をご覧に入れますので、一度話を聞いてもらえませんか?】
 ぜんぜん相手にされなかった。
 さらにハードルを下げる。
 ニュー◯ンプレスの編集デスクへメールを送った。
【私、光より早く移動することが出来るんです。本当です。取材には全面的に協力しますので!】
 「いたずらは止めろ」とアドレスをブロックされた。
 もう残された発表の場はここしかない。
 オカルト雑誌ム◯の発行元である学◯プラスにメールを送った。
【私ってばテレポーテーションできる能力があるの。お願い取材して(泣】
 「そろそろ廃刊しそうなので無理です」と断られた。
「うう、だめだわ……」
 というわけで、私は今日も万引きとカンニングにいそしんでいる。


『鼻毛結い』【りきてっくす→るうね】

 東アフリカのチャルビ砂漠で暮らすチャルバン族には、他の部族では見られないユニークな風習があった。年じゅう埃っぽい大地で生活する彼らは鼻毛がとても発達し、成人では五センチくらいまで伸びる。男たちは特に気にかけていないが、女性はこれを麻の糸で結んで唇のまえに垂らすことをおしゃれとしていた。結びかたにも色々流行があって、またどんな色の糸を使うかで既婚女性かそうでないかを見分けることができた。そのためチャルバンの村には、鼻毛結いと呼ばれる特異な職業が存在していた。
 ポコハラは子どものころから手先が器用で、六歳のとき知り合いの鼻毛結いに弟子入りした。今では押しも押されぬカリスマ鼻毛結い師である。彼の家のまえには連日、鼻毛を結ってもらおうと若い女性たちが列をなしていた。
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