第99話
文字数 593文字
「というわけで、我々が芹沢鴨を、この時点で殺害したわけだが」
言いながら、未来人の一人がモニターを眺める。
「でも、本当に大丈夫なんですか? こんなことをして、歴史が変わってしまうのでは」
「なに、心配ない。歴史には修復力があるからね。どんなことをしても、その後の歴史が大きく変わることはないのだ」
「そうなんですか」
「さあ、次は源頼朝を殺しに行くぞ。それとも、聖徳太子にしようか」
「ま、待ってください。なんか、私の体が薄れてきたんですが」
「ふふ、ようやくか」
「ど、どういうことです」
「さっき言った、歴史の修復力だよ。歴史上の偉人を殺して回る君を消し去ってしまえば、歴史が変わることはない。偉人でも何でもない君がいなくなったところで、歴史には何の影響もないからね」
「そ、そんな。では、なぜあなたは消えないんですか」
「実際に手を下したのは君だからねぇ」
「く、くそっ。謀ったな」
「妻と浮気した君が悪いのだよ、はっはっは」
タイムマシンの中に、笑い声が響く。
二人いた未来人は、すでに一人になっていた。
『無血』
暗い座敷で二人の人物が向かい合っていた。
書面に目を通していた勝が、目の前の男に鋭い視線を送る。だが、相手は動じた様子もない。
内心で舌打ちと同時に舌を巻きながら、勝は口を開いた。
「この協定には嘘があるようだな、西郷さんよ」
目の前に座った相手――西郷隆盛は静かな瞳で勝を見つめていた。
言いながら、未来人の一人がモニターを眺める。
「でも、本当に大丈夫なんですか? こんなことをして、歴史が変わってしまうのでは」
「なに、心配ない。歴史には修復力があるからね。どんなことをしても、その後の歴史が大きく変わることはないのだ」
「そうなんですか」
「さあ、次は源頼朝を殺しに行くぞ。それとも、聖徳太子にしようか」
「ま、待ってください。なんか、私の体が薄れてきたんですが」
「ふふ、ようやくか」
「ど、どういうことです」
「さっき言った、歴史の修復力だよ。歴史上の偉人を殺して回る君を消し去ってしまえば、歴史が変わることはない。偉人でも何でもない君がいなくなったところで、歴史には何の影響もないからね」
「そ、そんな。では、なぜあなたは消えないんですか」
「実際に手を下したのは君だからねぇ」
「く、くそっ。謀ったな」
「妻と浮気した君が悪いのだよ、はっはっは」
タイムマシンの中に、笑い声が響く。
二人いた未来人は、すでに一人になっていた。
『無血』
暗い座敷で二人の人物が向かい合っていた。
書面に目を通していた勝が、目の前の男に鋭い視線を送る。だが、相手は動じた様子もない。
内心で舌打ちと同時に舌を巻きながら、勝は口を開いた。
「この協定には嘘があるようだな、西郷さんよ」
目の前に座った相手――西郷隆盛は静かな瞳で勝を見つめていた。