第23話

文字数 538文字

 ごうごう、ごうごう。
 ようやくたどり着いた綾小路家のお屋敷は燃えていました。なぜ? 誰がこんなことを。
 不意に、マリカの脳裏に万華鏡のような記憶が蘇ります。それは自身の手にしたナイフと油壷。夕暮れの陽光が差し込む綾小路家の居間で、豊麻呂様をはじめ、ご家族や使用人の方々が倒れ伏しています。マリカは、血まみれのナイフを手にしたまま、油壷の中身を死体に振りかけ、そして……。
 そうでした。
 マリカは身分の違いで結ばれぬ二人の運命に絶望し、豊麻呂様を、そのご家族や止めようとした使用人たちを。
 そして、愛する人を失ったショックで記憶を失っていたのでした。
 ああ、豊麻呂様。愛しい愛しい豊麻呂様。マリカは、マリカはこれからあなたに会いに行きます――。
 そうして、彼女はゆっくりと、燃え盛る屋敷の中へと消えていったのでした。


『時を止める少女』【るうね→りきっくす】

 私は時を止められる。
 止められる時間は五分程度。その間、私は時の流れから解放され、自由な放浪者となる。万引きはし放題だし、カンニングを見咎められることもない。だが、これでは宝の持ち腐れだ。もっと大きなこと、世界を変えるような偉業を成し遂げたい。考えた末、私はある計画を実行することにした――。
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