第97話

文字数 836文字

 そんなオレにも苦手は奴はいる。
 かの名探偵、明智小五郎の子孫、明智大五郎だ。
「現れたな、二十面相3世!」
「元気そうだな、明智大五郎!」
「今日こそ、お前を捕まえてやる!」
「ふははは、お前などにできるものか!」
 そう言って、オレは懐から携帯ハンググライダーを取り出したが、それには穴が開いていた。
「な、なにっ!?」
「ふふふ、二十面相。君がハンググライダーを使うことは推理で分かっていた。だから僕は、世界中のハンググライダー屋を回って、こっそり穴を開けておいたのさ」
 く、なんたる推理力となんたる行動力。やはり、こいつは侮れない。
「ならば見よ、オレの秘技、変装七変化!」
 俺は煙幕を焚き、警官に変装した。何食わぬ顔をして、その場を離れようとする。そんなオレ肩を、がっしと明智がつかんだ。
「ついに捕まえたぞ、二十面相!」
「な、なぜ分かった!? オレの変装は完璧なはず……」
 簡単なことだ、と明智はしたり顔で、
「こんなこともあろうかと、僕はあらかじめ世界中の人間を殺して回っていたのさ。もはや、この世に人間は僕たち二人だけ。すなわち、僕以外の人間が二十面相、君ということになる」
「お、おのれ、明智ぃ……」
 こうして、オレは捕まった。
 そして数か月後、オレたちは二人とも餓死をした。どうやら、世界は名探偵と大怪盗だけでは回らないらしい。


『こんなはずでは』【るうね→りきてっくす】

「おや、こんなところに、この小説のオチが落ちているぞ」
「あら、ほんとね」
「どうやら、僕が君を殺して、『こんなはずでは』とつぶやいたところで、この小説は終わるらしいな」
「まったく意外性がないわね。だって、わたしたちは不仲な夫婦ですもの。あなたはわたしを殺すためのナイフを、懐に忍ばせているのでしょう?」
「ああそうだ。やれやれ。きっと、この後に続く話も意外性のないものだよ。読むに値するかな?」
「あら、あなた。それは後編の作者に失礼というものよ。きっと、すごく意外な展開になるに違いないわ」
「そう願いたいね」
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