第38話

文字数 1,018文字

 しばらく首を捻っていたが、悩んでいてもしようがない。こうなったら自分の体のほうを合わせることにした。
「ピピルマ ピピルマ プリリンパ 俺の体よ 小さくなあれ」
 俺は魔法の杖を振った。ぼわわわんと白い煙が立ち、それが晴れると俺の体は今までより二回りほど小さくなっていた。
「よし、これで靴下が履ける」
 実際に履いてみたら、サイズはぴったりだった。
「さて、のんびりしてる場合じゃないぞ。急がないと会社に遅れてしまう」
 俺は大急ぎで家を出ようとした。
「ああ、しまった!」
 俺は叫んだ。体を小さくしたので、今度は靴が大きすぎて履くことができないのだ。
「もう、しようがないなあ」
 俺はまた魔法を使うことにした。
「パパレホ パパレホ ドリミンパ 俺の靴よ 小さくなあれ」
 杖を振るとぼわわわんと白い煙が立ち、それが晴れるとお気に入りの革靴が2サイズほど小さくなっていた。
「よし、これでもう大丈夫だ」
 実際に履いてみたら、サイズはぴったりだった。
「さあ今度こそ急がないと、今日は朝から営業会議があるのだ。遅刻なんかしたら課長から大目玉を食らうぞ」
 俺は家を飛び出し、駅までの道のりを急いだ。
「うわ、ダメだ、ぜんぜん早く歩けない」
 体が小さくなったので、相対的に歩幅も減少し、急ごうとしてもなかなか前へ進まないのだ。しようがないので、また魔法の力を借りることにした。
「パンプル ピンプル パムポップン 街よ 大地よ 小さくなあれ」
 杖を振ると白い煙が立ち、それが晴れると地球が二回りほど小さくなっていた。
「うむ、これで万事解決だ」
 その後は何の問題もなく、会社もぎりぎり間に合った。いつも通り仕事を済ませ、帰宅して食事をし、いつも通りにベッドへ入る。
 そして翌朝目が覚めると……おや?
 俺は首をひねった。
 靴下のサイズが、また小さくなっている。
 しばらく首を捻っていたが、悩んでいてもしようがないので、自分の体のほうを合わせることにした。

 こんなことが一ヶ月ほど続いた、ある日……。
「うわっ、巨大地震だっ、助けてくれえ!」
 地球は、月の重力に引き寄せられて消滅したのだった。



『短気』【りきてっくす→るうね】

 伝承によると、新撰組の沖田総司というのはとても短気な男だったそうである。
 日ごろ意味もなくにこにこしている人には、お天気屋が多い。その例に漏れず、彼もつまらない事で顔色を変えては、腹立ち紛れに騒動を起こしている。
 例えばこんなエピソードがある。
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