第21話

文字数 572文字

 と、そこでふと思い出した。
 妻が、嘘を見抜く達人だということを。
 もし、心にもないことを言えば、すぐに看破し、責め立ててくるだろう。正直、それは避けたい。
 私は少し考え、
「それにしても、コロナはいつ収束するんだろうね。カタログでなく、店で買うことができれば、そんな間違いは起こらなかったろうに」
 そう言ったが、妻の鼻息は収まらない。
「コロナなんて関係ないわ。やっぱりこのカタログに問題があるのよ!」
 くそっ、失敗か。
 かくなる上は……。
「ぐぅ」
「ちょっと、いきなり寝たふりなんかして、どういうつもり? 言いたいことがあるなら、はっきりおっしゃい!」
 言ったら怒るくせに。
 さて困った。
 いよいよ追いつめられた私は、起死回生の策を練る。ここから、どう逆転するか。妻の機嫌を損なわないためには……。
「なら、もう一着買ってあげるよ。気に入ったのを選ぶといい」
 その言葉に、妻が会心の笑みを浮かべたが、私は気にしないことにした。
 夫婦円満の秘訣は、どちらかがひたすら我慢することだ。



『バイオはザード』【るうね→りきてっくす】

「ぞ、ゾンビだーっ!!」
 真昼の校内に、そんな叫び声が轟いた。
「ついにやって来たか、この日が」
 警備員室でショットガンの手入れをしていた丸田は、ぽつりとつぶやき、立ち上がった。
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