第69話

文字数 689文字

「あれ、ミミナだけ?」
 ぼくが尋ねると、ネコ耳娘――ミミナは悲し気に耳を伏せる。
「他のギルド員は、予定があるってニャ」
「そか」
 仕方ない。
 今日でサービス終了するゲームにログインを強要できるはずもない。
「じゃ、二人で最後の狩りに行こうか」
「了解ニャ!」
 そして、数時間ぐらい狩りをして。
 サービス終了の時間が近づいてきた。
「ありがとう、ミミナ。最後に二人で狩りができて楽しかったよ」
「こちらこそニャ!」
「じゃ、また他のゲームで会ったら」
「うん……よろしくニャ!」
 単なる口約束。
 でも、それだけで少し気が楽になった。
「じゃあね」
「またニャ!」
 そして、ぼくはログアウトする。
 ヘッドギアを外すと、暗く狭い自分の部屋が視界に飛び込んできた。
「……寝るか」
 そして、ぼくは眠りにつく。明日も仕事だ。


 そこで、俺はログアウトした。
「なんだこれ」
「すごいでしょ。しがない中年サラリーマンの人生を疑似体験できるVRマシーンですよ」
「たしかにすごい。すごくリアルだ。だが」
「ん?」
 このマシーンを開発した後輩が、首を傾げる。
「不満げですね?」
「なんで、わざわざしがない中年サラリーマンの人生を疑似体験せにゃならんのだ!」




『値上げ』【るうね→りきてっくす】


「なんだ、これも値上げかよ」
 俺は舌打ちした。好みの味のふりかけ。それが十円ばかり値上がりしている。
「こっちのブロッコリーもか」
 最近、物価の値上がりが激しい。これで給料が上がっていればいいのだが、残念ながら給料は据え置き。にも関わらず、物価ばかりが上昇している。
「最近はガソリンの値段も高止まりしてるしなぁ」
 俺は小さくため息をつく。
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