第71話 奇跡のメンバー
文字数 1,177文字
今から四年前、地元の少年野球チームである
離脱した佑介も呼び寄せて、全員で円陣を組む。
「歴代トップクラスの、俺らぁ
打順は9番の
「清のヤツ、こないだの県大会に代打で出よって、ヒット打ちよったがです」
まるで自分のことのように誇らしげな顔で、文太が言う。
「それが9回の裏、2アウト二三塁ゆう場面ですよ? あいつ、おとなしそうな顔しちょるくせに、
「それやに、9番らぁ打たせてしもうて、すまんことしたにゃ……お前と直人じゃち、野球部では内野手やったがやろう?」
樹の目をまっすぐに見返しながら、文太は毅然と言い放った。
「そんなこたぁ、
文太の言った通り、清は実に落ち着いてボールを見ていた。2ストライクのあと、やや高めに来た球に狙いを定めてフルスイングする。伸びあがったショートのグラブをわずかに越えて、打球はセンター手前に落下した。
つづく耕太郎は外へ逃げる変化球を上手くバントでとらえ、サードへ転がす。「超」がつくほどベテランの三塁手はすでにスタミナ切れらしく、もたつく間に耕太郎は一塁ベースを踏んだ。
若手の
「ノーアウト満塁ちや!」
「クリーンナップや。一発デカいのかましちゃれや!」
仲間たちの激励を受けて、文太がバッターボックスに向かう。
試合を再開と同時に、ピッチャーの秀幸は三塁に牽制球を投げた。ランナーの清は素早く塁に戻る。サードからの返球を受けた秀幸は、今度は二塁へ牽制する。大きくリードを取っていた耕太郎は、とっさに二塁へ戻りかけた。しかし、ここで思わぬことが起こった。送球が速すぎて、セカンドが捕り損ねたのだ。耕太郎は三塁へ走り、清も弾かれたようにホームを目指す。
「バックホーム!」
キャッチャーの潮が叫ぶ。
セカンドからの返球とほぼ同時に、清は頭からホームに滑りこんだ。