第70話 戦う男たち
文字数 1,403文字
「ちぃと外してみるか?」
樹が佑介に耳打ちすると、佑介はこっくりとうなずく。
小心者の佑介にしては珍しく、さほど動揺していないようだ。樹は安堵して、ストライクゾーンぎりぎりのインコース低めにミットをかまえる。期待通り、俺もつづけとばかりに打ち気にはやるバッターは初球から振ってきた。打球はボテボテのピッチャーゴロ。その後もヒットを許すことなく、この回を終えた。
しかしながら、7回の裏で1対5。すでに4点もの点差が開いている。
8回の表、先頭バッターは樹。三度目の打席で、ようやく秀幸の球筋が読めてきた。そもそも、右打者である樹にとって、球の出所が見やすい分だけ、左ピッチャーは有利なはずなのだ。
バッテリーは低めにボールを集めている。手を出したところで内野ゴロだ。高めのボールに当たりをつけて、樹は辛抱強く待った。ツーストライクの後、すっぽ抜けたような高めの球がきた。振りぬかず、合わせるように当てていく。打球はピッチャーの頭を超え、樹は一塁へ滑りこんだ。
それが起爆剤となったのか、つづく左打者の堅悟は外へ逃げるカーブを上手く流してサードの頭を抜けるヒットを放つ。勢いにのった荷緒小チームはこの回に2点を返し、攻守交替となった。
「この回を抑えて、次で逆転ちや!」
ますます士気が上がる荷緒小チームだったが、思わぬハプニングに見舞われた。
ライナーを捕球した佑介が指を痛めたのだ。
「
続投しようとする佑介を、誠がいさめる。
「そう言うたち、無理しよったら本業に差し支えるがやないか?」
それまで別人のように堂々としていた佑介が、今にも泣きださんばかりに顔をゆがめる。
「今日だけは、情けない姿、見せとうなかったに……」
必死で身にまとっていた鎧が
「誠の言う通りちや。テニスができんなったら、和田先輩らぁに会わせる顔がないけんにゃ……」
申し訳なさそうに皆へ頭を下げると、佑介はマウンドを降りた。
話し合いの結果、レフトの修平が引き継ぐことになった。センターの文太とライトの直人が守備範囲を広げて、修平の抜けた穴を埋める。
「ピッチャーのまね事しよっただけで、まともに投げたこと、ないがですけんど……」
「それで上等ちや。ほかに誰っちゃあ投げれるヤツはおらんがやけん」
樹は修平の肩を抱き、
「どこじゃち、好きなとこへ投げたらえいで。俺が必ず
ピッチャー交代のあとも、リバーズの猛攻はとどまることがなかった。
明らかなボール球さえ打ちにいく始末だ。
「たまぁるか! えい年しよって、大人げない爺ぃどもちや」
憤慨する堅悟を誠が茶化す。
「仕方ないろう? 『男の勝負や』ち言うたがは、お前ながやけんにゃ」
結局、荷緒小チームはこの回に5点を失った。
がっくりと肩を落とす仲間たちへ向けて、樹は声を張る。
「7点差らぁて、何ちゃない! あの、