第0話 プロローグ
文字数 293文字
届くはずのない熱が、
空が刻々と色を変える。
熟れた蜜柑の色。青みがかったもの、赤みをおびたもの、濃淡さまざまな紫陽花のむらさき。
まぶしさに目を細めて、色とりどりに縁どられた山並みを見上げる。
淡い水墨画のようだった灰白色の稜線が、しだいにその輪郭をあらわにする。
それは一日の終わりを告げる風景。
遊び疲れて、あるいは物足りない思いを抱えながら、仲間たちと一緒に眺めた景色。
故郷を離れた今、焦がれるように思い出す。
陽の名残を浴びながら、黒々と浮かび上がる稜線——