第46話 虎杖
文字数 859文字
ツーリングから戻ると、誠は言った。
心なしか顔色がすぐれない。祥子から床をとろうかと尋ねられても、断らなかった。
(無理させてしもうたかにゃ……)
今ごろになって、
倒れこむように、布団へ寝転んだ誠は、すぐに寝息をたて始めた。
祥子は樹の布団も敷いてくれたので、横になってみたけれど、どうにも眠れそうにない。仕方なく、夏休みの宿題を片づけることにした。
開け放した窓から、蝉の声に混じって、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
ふいに、なんともいえず寂しい気持ちになった。
せっかく誠が来てくれたのに……
仲間たちのこと、新しい生活のこと、聞きたいことや話したいことが多すぎて、何を話せばいいのか分からなくなる。
どうすれば、その隙間を埋めることができるのだろう……
誠が目を覚ましたのは、昼近くなったころだった。
昼食に、祥子が冷や麦を茹でてくれた。添えられた小鉢を見て、樹は思わず声をあげた。
「嬉しいにゃあ。俺、ばあちゃんの炊いた
「春先にようけ取って、塩漬けにしちょったがよ。こじゃんとあるき、足るばぁ食べたや」
得意げに笑う祥子に、誠は申し訳なさそうに言った。
「すまんにゃ。俺ぁ、ちっと苦手ながで……」
樹は不思議に思って尋ねた。
「小学校のころ、道端に生えちょうがを、よう一緒に食うたやか?」
「ガキのころは好きやったけんどにゃあ。いつの間にか、食えんようになってしもうたが」
「生の虎杖を食べ過ぎるとお腹をくだすき、それで苦手になったかもしれんねぇ」
祥子のことばに茂もうなずく。
「おやつ代わりに塩をびっとつけて食うたら美味いでねや。