第172話 MRIの中で見たもの

文字数 461文字

 ヘッドフォンは
 音楽を楽しむためのものじゃなくて
 グォングオングオンと響く音の対策だった
 久しぶりのMRI検査は
 インプラントの歯を気にしながら
 狭い筒に押し込まれる

 耳元で鳴り続ける轟音
 技師は20分から30分だと告げた
 検査が始まると筒の中は白の世界
 思わず目を閉じると
 規則的な轟音が耳につく

 何を考えていたのか
 何も考えていなかったのか

 検査が終わり
 ベットが動いた時に
 自分が寝ていたことに気づく
 「こんな轟音の中で寝ていたのか」
 と、我ながら呆れる

 帰ってきた無機質な音と
 白い装置が現実を教えてくれた、けど

 つい、今まで
 平安座島のビーチに座って
 4P入りのタコスを食べていたんだ
 夢の中で妻が言う
 「年間パスを買うなら平日に行かないと!」
 首里城の年パスの事だと
 そして夢の今日が金曜日だと分かる
 夢の僕はハイテンションで応える
 「今から行こうか!」

 さすが ”夢” だと思うのは
 海中道路を渡ると首里だった

 (轟音が波音に変換されたのか?)
 
 MRIの中で沖縄の海を見ていた
 悪い検査結果になる筈がない
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