第7話 昔を散歩した波の上海岸

文字数 414文字

 偶然見つけた白黒写真の裏には
 還暦を迎えた僕が生まれた日よりも、古い日付が鉛筆で書いてある
 添え書きは「波の上にて」

”とんぼ”と書かれた小さな漁船のヘリに腰掛け
 40年近く前に亡くなった父が写っている。

 波上宮に参拝した後にビーチに降りてみた
 父の写真が撮られた場所を探してみようと思う
 広いビーチのどこだかわからないが、手がかりはある
 背景に写っている人の横顔のような岩だ
 漁港がビーチに変わり果てても
 この岩は、変わらずに残っているかも知れない。

 旅先の限られた時間内で『昔』にたどり着けるか?
 不安と期待をチャンプルしながら
 70年ほど昔に撮られた写真を手に、浜辺に降り立つ。

 

 あれ?
 目の前に見える岩の形に覚えがある
 手元の白黒写真を見る
 
 あれ?
 もう、見つけてしまった

 探し歩く苦労も、過ぎゆく時間に焦る事もないまま
 
 見つけてしまった。
 
 ”感動”には、多少の困難さは必要だと思った
 親父が写真の中で笑う。


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