第51話 聞かされて食べられなくなったヒージャー

文字数 505文字

かつて、ディープな時代に
沖縄勤務をしていた上司に聞かされた話が強烈で
以来、ヒージャーを避けている。
いわゆる”山羊”だ。

彼が食べた山羊は ”おもてなし” の体裁で訪ねた
家の庭に吊るされていた。

ひと通りの仕事を終えて、帰ろうとした時に
「せっかくだから」とヒージャー汁と刺身を
「作る」と言われたらしく
郷に従って誘いに乗ると
吊るされていた山羊の下に大鍋をおいて
首を刎ねた

仰天している彼の度量を推し量るのが目的だった
と、感じた彼は
極力、平静を装って解体されていく山羊を見ていた。

大鍋に溜まった血で煮込むのが ”本物” かどうかは
わからないが、一緒に出された刺身も ”新鮮” だった

味は?と、尋ねる僕に
上司が言う
「一週間は全身の毛穴からヒージャー臭が消えなかった」
「舌で感じる味より、鼻で感じた臭いの記憶が鮮烈だった」

たいていの物を口にしてしまう上司に
「一生、ヒージャー汁は食べない」
と言わしめた
”料理” ?の話が強烈すぎて
聞いて以来、ヒージャーを食べたい気持ちが失せてしまった。

上司が食べた後の、亭主の様子を聞いたところ
「潰すところから見て、ヒージャーを食べた内地の
人間には会ったことがない」
と笑顔もなく言われたそうだ。
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