第97話 シーサーのおさがり

文字数 712文字

我が家の玄関には
結構、上等のシーサーが鎮座している
シーサー作家の作品で優しさと威圧感が同居する
節分には豆撒きをしながら
玄関を守ってくれているシーサーに
御礼の気持ちを込めて、足元に数粒の豆をお供えする
それは20日足らず前の事

ある日の夕方、突如として妻が部屋に入って来て言う

「お下がりやから、食べなあかんで」

何のことかと思い、妻の差し出さす掌の上には豆が数粒

「シーサーさんの豆を捨てる訳にいかんやろ、食べて」

お供えした節分は20日足らず前

『食べられるのか!』 僕は当然の疑問を伝える
「グニャグニャになってる」(食べたらしい)

掌には4粒の大豆が見える
『お前は食べへんのか?』と言ったら
「3粒食べたけど、ひとつだけ食べてあげるわ」

ひと粒を口に入れる
これで、僕の選択肢が無くなった

差し出された豆は3粒だ

「豆と思ったら食べにくいで」

覚悟してひと粒口に入れる
湿気を含んだ豆はグニャっと潰れる
常温の柔らかい豆の食感が気持ち悪い・・
蒸している途中の豆を取り出して
常温まで冷ましても、これより美味しい気がする

飲み込めない
口の中に残った豆くずが無くならないから
ペットボトルのアルカリイオン水で流す

「不味いやろ・・不味いねん」

セリフと裏腹になぜか楽しそうに話してる
「シーサーに供えた豆やから捨てられへんやん」
言いながら、僕があとふた粒食べるのを見ている

仕方なく、続け様に口に入れる
ぐにゃり、もさもさ、ごりごり、ぐにゃり
これ?大豆だけの味か?
そもそも20日前の豆が食べられるのか?

妻の勢いに負けた”後付けの疑問”に”希望”を祈る

『この3粒でお腹が痛くなりませんように』

来年は、シーサーに供えたりせずに普通に撒こう。

追記
僕も妻のお腹も痛くならなかった。
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