第17話 呼ばれないから行けないカベール岬

文字数 543文字

 久高島に渡ったのは、もう20年以上も昔
 友人たちとレンタサイクルを借りて
 島の中を2時間ばかり走り回った

 もちろん
 神の島であることは知っていたし
 うかつに浜辺に降りては行けないのも知っていた
 クボー御嶽に礼を尽くすことも知っていた

 でも
 カベール岬に続く一本道を走るのは楽しかった
 レンタサイクルで競う子供と友人に笑った
 岬から見えた海を「キレイ」だと感じた

 旅の土産話に興味を持った兄が
 それから何度も島に渡っている
 カベール岬で祈り
 「キレイ」だけじゃない海に涙を流す

 それから兄は数年続けて渡り続けた
 僕らはと言えば
 あれきり久高島には渡っていない
 兄の不思議な体験を聞いて
 「行こう」と思った事もあったけど
 雨だったり
 他の予定を優先したりして行

なかった

 「行かなかった」 のか?

 20年前と違い
 今は知っている事も増えた
 挨拶を先にする場所がある事
 イザイホーという神事があった事
 46年間その神事が途絶えている事
 神様の道はソコじゃなかった事

 知ってから行くのと
 知らずに「行った事がある」のと
 ”心” の違いに気づきたい

 だから
 もう一度久高島に渡りたいけど
 なかなか "機会" ができない

「呼ばれてないからかな」 妻が言う

「だからよ」 僕が返す
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