フィナンシェ

文字数 1,920文字

 焼き菓子の中では、マドレーヌと同等の知名度を誇っているこのお菓子
 詰め合わせでも定番ですし、一度は食べたことがあるという人も多いのではないのでしょうか?
 マドレーヌと同じく、フィナンシェも決まった形を持った焼き菓子です
 一見するとただの台形なんだけど、実はこれ金塊の形を模しているとか(昨今では、様々な形で売られているので一概にはいえないけど)
 
 その理由は――

 調べてみたところfinancier(フィナンシェ)には財政家、財務官、金融業者、 資本家という意味がある
 またサン=ドゥニ通りの菓子職人ラヌが考案し、パリ証券取引所周辺の金融街から広まった――という説も

 というわけです

 実際、焼き色も黄金とまではいいませんが結構近い色合いでしょうか?
 ですが、フィナンシェはマドレーヌと違って

使わないので、決して卵の黄身の色ではないんです

 では、なんの色かといいますとそれはバター
 それも焦がしバター(ブール・ノワゼット)の色なのです

 このブール・ノワゼットがまた曲者でして……
 海外だと名前の通りノワゼット(仏語でヘーゼルナッツの意)の色まで火を通す意味だと解釈できるんでしょうけど
 日本だと「ヘーゼルナッツ?」だったに違いありません
 更には翻訳の問題もあってか――本当に

まで焦がして使っていました

※日本でヘーゼルを表す(はしばみ)色はシェイクスピアのロミオとジュリエットにて、『ヘーゼル・アイ』という表記を『榛色の瞳』と訳したのが始まり
 つまり、日本においてヘーゼルという言葉は食用のナッツよりも先に文学表現として伝わった、と思われる
 
 正直な話、今でも真っ黒に焦がして使っているお店もあるんですけどね
 なんでも、そのほうが美味しいらしいけど……絶対、健康的には良くないかと
 しかしながら、ブール・ノワゼットは個人個人によって焦がし具合が違うのでなんとも言えないのが現実
 それにお店がどこまで焦がしているかなんて、知る術もありません

 とまぁ、埒のあかない話は置いといて
 
 このブール・ノワゼットと卵白、そしてアーモンド・プードル(アーモンドの粉)がフィナンシェの主材料(副材料は薄力粉と砂糖)
 最近では、そこに少量のノワゼット・プードル(ヘーゼルナッツの粉)が入るのが流行り(私が知る限り、ピエール・エルメが考案)
 ヘーゼルナッツが入ることでアーモンドの繊細な香りと味が際立つとのこと
 いわゆる、味の相乗効果というモノでしょう

 それらすべてを混ぜ合わせ、人によっては一晩寝かせて(必須ではない)、専用の型に流し込んで焼成
 だいたい200~220℃という高温で一気に焼き上げます

 個人的には外側がカリッ、中はしっとりとした出来立て――粗熱を取った頃合いを食べるのがお気に入り
 残念ながら、時間の経過と共に湿気を吸って柔らかくなってしまうので、お店の個別包装されたモノではこの食感を味わうことは難しいんですけどね
 ただ、出来立てのフィナンシェは本当に美味しいので、興味のある方はご自分で作るか、作れる知人友人に是非とも頼んでみてください

 最後に紅茶とのマリアージュ
 このフィナンシェは芳醇なバターとアーモンドの味を持っていますので、色々な紅茶を合わせることができると思います
 もちろん、繊細な香りと味を楽しむような上品な茶葉は別ですけどね

 油脂の割合が多く、砂糖の甘さがダイレクトには伝わらないので特徴的な渋みを持つダージリンやウバも悪くない
 同様にイングリッシュブレックファーストやアフタヌーンといったブレンドも
 また、その脂の匂いを打ち消してくれるアールグレイなどのフレーバーティーでも良い
 更にはロイヤルミルクティーやチャイといった、飲み応えのある紅茶にだって負けずに合うでしょう
 
 私としては、バニラフレーバーのミルクティーがお勧め
 もしくは、バニラと一緒に煮だしたロイヤルミルクティー
 バニラのフレーバーティーは定番ですので、様々なお店で手に入れることができます
 個人的なお気に入りは「マリアージュフレール」のグラン・ボワ・シェリ
 もしくは、高い上に手に入れにくいですが「テbyラデュレ」のヴァニーユ 
 
 実際、このフィナンシェは紅茶に良く合うと言われています
 ――が、コーヒーにも合います
 というか、フルーツなどが入らない焼き菓子とコーヒーは相性が良いです
 その中でも、フィナンシェは特に味が濃いので最高
 栄養学における6つの基礎食品群だと、ナッツ類は『脂質』の項目に入りますからね
 そして、なんだかんだ言ってもやはり『脂』は美味しい
 お菓子だとバター、生クリーム、チョコレート、ナッツ類
 夏場はアレかもしれませんが、寒くなってくる時期だと最高じゃありません? 
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