クロワッサン

文字数 2,163文字

 これまた、説明がいらないであろう菓子パン(ヴィエノワズリー)
 茶色い三日月にサクッとした歯ごたえ
 幾層にも折り重なったバターと生地によって生まれるテクスチャーは独特で、他のパンでは味わえない代物です

 ただ三日月のはクロワッサン・オルディネールといって、バターではなくマーガリンなどの油脂を使ったものらしいですけどね
 これは経費削減とかではなく、朝食を始めとした食事用だから――
ordinaire(オルディネール)は「平凡」「日常」「普段」という意味)
 だから、サンドイッチに使われるクロワッサンはこちらのほう

 で、ひし型――正直、あの形をひし形と認識したことはないけど――がバターを使ったクロワッサン・オ・ブール
 まさしく、

パンというべき濃厚なお味
 パティスリーで売っているのは当然こちらで、食事用として食べるのは確かにちょっぴり重たくて自己主張が激しいです
 そんでもってお値段も高く、普通にケーキが買えちゃうくらい
 
 また、派生としてチョコレートやアーモンドクリームを挟んだパン・オ・ショコラやクロワッサン・ダマンドなんかもあったり
 とはいえ、こちらも今となってはブーランジェリーやパティスリーはおろか、スーパーやコンビニでも見かけるようになりました

 それでも、クロワッサンの人気は根強いです
 なんたって、それだけで行列を作ることができますからね
 やはり、バターを大量に使っているだけあって(だいたい材料の半分くらい)味のインパクトが圧倒的
 
 もっとも、一番の理由はパンとパイの中間くらいの独特な食感でしょうけど
 これは生地(デトランプ)で冷たいバターを包み込み、何度も折ることで生まれる層によって成り立つもの(逆さ折り(ランヴェルセ)もあるけど、今回は割愛)
 
 生地でバターを包んだ状態だと、下から生地バター生地
 それを伸ばして3つ折りor4つ折り→4分の1回転させて、また同じように折る(この作業をトゥレと呼ぶ)
 そうすると、生地バター生地バター生地バター生地……といった具合に、伸ばして折るを繰り返すことで何十、何百といったバターと生地の層になっていきます
 
 ただ、バターが冷たくないと生地と混ざってしまい層ではなくなるので、トゥレするごとに冷蔵庫で休ませる必要があります
 そのトゥレを数回(だいたい2~6)しなければならないので、クロワッサンは焼成までに時間がかかり――結果、お値段も高くなるということ

 当たり前ですが、時は金なり
 それによって1日で作れる&売れる量が決まりますので仕方のないことです
 そして、上記の生地を焼成しますと当然バターは沸騰します(あくまでバターと生地の層であり、混ざり合っていない為)
 しかしながら、そのバターは上下をパン生地に押さえつけられた状態
 ですが、生地が焼けて固くなるよりもバターが溶けて沸騰するのが早いので――生地の中の水分とバターが反発して、あの幾重もの空洞が生まれるというわけです
 
 一言で述べますと、水と油による反発
 ちなみに、折り込みパイ(フィユタージュ)も同じ原理(違いは発酵生地かそうでないかだけ)

 さてこのクロワッサンですが発祥の地はハンガリー、オーストリア、フランスという具合に色々と錯綜しています
 三日月というのは一致してるんですけども、この三日月がどこからきているのか――
 由来は様々でトルコ軍の旗、僧侶が首にかけていた袈裟の形、肥沃な三日月地帯(オリエント史において、ペルシア湾からエジプトへと至る半円形の地域)……etc.

 とはいえ、それはあくまで形の話
 
 あの独特な食感のクロワッサンは間違いなく、フランス生まれといえるでしょう
 バターと生地を混ぜ込むのではなく、折り込んで層にするという発想はなかなかでないでしょうから
 
 その発想に至った経緯は不明ですが、推測できなくはありません
 たとえばタルト・タタンのように失敗して、それを修正しようとした結果とか(バターを入れ忘れ、あとから足した)

 それにバターの使用量からしてみても、クロワッサンはパンの中では例外です(バターロールの倍はバターを使う)
 だから先にパイが生まれ、それを真似たのがクロワッサンというのが私の持論
 まぁ真相はわからないですし、正直どうでもいいですけどね
 実際、様々な媒体で出回っている「パン屋のおかげでトルコ軍を撃退した」という由来のほうが面白いでしょう
 
 最後にこのクロワッサンと合わせる紅茶
 個人的な意見というか習慣ですが、食事としてならモーニングやイングリッシュブレンといったミルクティー
 お菓子としてならアッサムかウバ、ラプサンスーチョンのミルクティーでいただいております
 一概には言えませんが、私としてはパンと共に食べる食事=オムレツとなっておりますので、ミルクティーであっても相性は抜群
 ただ当たり前といえばそうですけど、食事にフレーバーティーはちょっと合わない

 対して、ヴィエノワズリーとしてのクロワッサン・オ・ブールならフレーバーティーでも相性いいです
 特にバニラやショコラ
 ロイヤルミルクティーで淹れてやると、それだけで贅沢なお菓子を食べている気分に浸れます
 
 ちなみに、私がラプサンスーチョンを合わせるのは単に使いどころが少ないからといった現実的な問題です
 とはいえ、こういった純粋なバターと砂糖にスモーキーフレーバーは合うと思いますよ
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