チェリー・ジュビレ

文字数 1,399文字

 6月のパティスリーでは、アメリカンチェリーを使ったお菓子が見られるようになります
 この時期ではスーパーでも簡単に手に入るほど旬なのですよ

 個人的にはアメリカンチェリーをふんだんに使ったタルトが好きなのですが、今回ご紹介するのは素朴な焼き菓子とは異なるレストランのデザート

 それはチェリー・ジュビレ(又の名をスリーズ・ジュビレ、チェリー・ジュビリー、スリーズ・ジュビリー)
 表記ズレは英語とフランス語の違いがあやふやだった時代に誕生したからでしょう
 なんでも、ヴィクトリア女王の即位50周年(1887)を祝って作られたとのこと
 製作者はエスコフィエ
 現代に至るまでのフランス料理の基礎を築いた天才です

 Jubilé(フランス語)jubilee(英語)も意味は一緒なんですが……
 
 本来は旧約聖書のレビ記に基づくヨベルの年――ユダヤ教とカトリック教会の聖日(前者は50年に一度の大恩赦の年、後者は25年に一度の聖年)
 現在では祝祭や祭典、歓喜といった意味だそうです(製菓用語だと「フランベした」という形容詞)

 ――とまぁ、ちょっとややこしい単語だったり
 
 英語とフランス語が混ざった「チェリー・ジュビレ」という名前が一般的なのは「スリーズ」だとイメージが浮かばないからでしょうか?

 さて、長々と名前の説明をしましたが……
 肝心の構成は非常に単純だったりします

 フランベした熱々のチェリー+冷たいバニラアイスクリーム
 正直、家でも作れます

1、アメリカンチェリーの種を抜き(できれば真っ二つに切ったりしないで)
2、鍋やフライパンで加熱、砂糖やレモン汁を加えて煮詰める(ジャムみたいに)
3、仕上げにお酒でフランベ(お酒は火がつけばなんでもいい。同じ「さくらんぼ」ならキルシュやマラスキーノ。ブランデーやラムもよく使われる)
4、冷たいアイスクリームにかけたり添えたりして完成

 まさにレストランならではのデザート
 冷たいと熱いのコラボレーション
 甘酸っぱくて温かいチェリーと濃厚なバニラ香る冷たいアイスクリームのハーモニー

 もっとも、これまた好き嫌いは分かれるでしょう
 火にかけてぐちゅぐちゅになったチェリーというか果物が駄目
 単純にアメリカンチェリーが嫌
 お酒の風味が嫌い
 バニラアイスクリームとフルーツソースの組み合わせが許せないといった人はいますからね

 それ以前にチェリー・ジュビレを食べたことがない人も多いはず
 扱っている店が少ない上に短い期間限定ですからね
 一部のレストランやホテル、バー……ぐらいでしょうか?
 というわけで、気になる方は家で作るのをお勧めします

 では、最後に合わせる紅茶のお話
 悩むんですよね、冷たいデザートの時ってアイスかホットか……
 ストレートティーなのは決まっているんですけど
 バニラアイスクリームがあるのでミルクはちょっと重い
 また、香りも熱々のチェリーソースのおかげで間に合っています
 
 これだけ自己主張が激しいと、お行儀の良いセイロンティーがいいかもしれない
 なかでも、キャンディかディンブラ
 溶けたバニラアイスクリームは生クリームと違って、時にべたつくような甘さが口の中に残る
 ただでさえ熱いと冷たいで舌は大忙しなのだから、刺激的な渋みといった余計な負担はかけるべきではないのです
 そして、アイスかホットは食べる時のコンディションで決める
 お店だと、空調が効きすぎて寒い時がありますからね
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