ティラミス

文字数 1,753文字

 近年に誕生したにもかかわらずイタリア菓子――いわゆる『ドルチェ』の中で、もっとも知名度が高いと思われるデザート
 なんでも、日本においてはバブル期に流行ったそうですよ

 Tira(引っ張って)」「Mi(私を)」「Su(上に)」という単語の組み合わせから、「私を上に引っ張って」という直訳を始め――
 転じて「私を元気づけて」「私をハイにして」「私を天国に連れて行って」と和訳されるお菓子です
 実際のところはわかりませんが「私を(性的に)ハイにして」と訳すのが正しいという説もあったり
 だからこそ、日本のバブル期と噛み合って大流行したのでしょう

 その理由としてあげられるのが、高カロリーかつ卵黄が使われている+イタリアの一部では夜遊び前に食べる夜のデザートとされていたこと
 ちなみに高カロリーなのは砂糖、生クリーム、卵黄、マスカルポーネチーズの仕業です
 マスカルポーネ

とありますけど、これは非常に柔らかい代物(スプーンで混ぜるだけでクリーム状になる)
 また乳脂肪分が80%と多く、砂糖を加えなくても甘みがあるタイプなので日本だとほぼティラミス専用? というかスイーツ用のチーズです

 そこに砂糖と卵黄を加えて混ぜ合わせ、エスプレッソをこれでもかっ! というくらいびちゃびちゃにしみ込ませたジェノワーズ〈ケーキ生地〉と合体させたモノが、日本ではスタンダードのティラミス(仕上げにココアパウダーをまぶす)

 もっとも、最近では2点の理由から卵黄が入らないことが多いです
 
 1、生の卵黄を食べさせるリスク、衛生的な問題
 2、卵黄を入れないほうが断然、日持ちがする

 1のほうはパータ・ボンブ――卵黄に高温のシロップを加えたり、湯銭で温めながら撹拌することで解決できますけど一手間かかります
 
 2のほうは完全に企業――お店側の都合
 このティラミスは時間の経過による味と食感の低下が極めて少ないので、作った当日以降も平気でだすお店が多いんです(特にカフェやレストラン)
 
 卵黄の有無に関しましては、クリームの色である程度判断できます
 卵黄の色が混ざる以上、どうしたって真っ白にはなりませんからね
 劣化に関しては、上にまぶしてあるココアパウダーがあまりに厚い場合は疑えるかな?(下手な人がかけた場合もあるので一概に言えないけど)
  
 ちなみに、イタリアだと卵黄と砂糖にマルサラ酒〈酒精強化ワイン〉を加えたパータ・ボンブ――ザバイオーネ・クリームが使われるのが主流
 海外だと、日本以上に卵の生食にうるさいですからね
 ※酒精強化ワインは醸造過程でアルコールを添加し、度数を高めたワイン。シェリー、マデラ、ポートワインが有名。
 シェリーを除いて、お肉料理のソースによく使われる(甘口タイプが)
 日本だと赤玉ポートワインがあるけど、あれは酒精強化ワインではなし
 
 また、エスプレッソをしみ込ませる生地もジェノワーズではなくて、ビスキュイで作ったフィンガー・ビスケット
※ビスキュイ、卵を卵黄と卵白に分けて作るケーキ生地
 それを絞り袋につめ、指のように細く絞って焼いたものがフィンガー・ビスケット
 イタリア語だとビスコッティ、ディータ・ディ・ダーマ〈貴婦人の指〉

 どちらにせよ、現代においてはコーヒーをしみ込ませた生地+マスカルポーネを使ったクリーム+ココアパウダーの3点が揃っていれば、誰もがティラミスと認識すると思われます 

 さて、このティラミスに合わせる紅茶ですが――
 ケーキにコーヒーが使われている時点でまぁ難しいです
 その上、ココアパウダーも使われていますからね

 それに夜のデザートと言われているだけあって、ティラミスにはコーヒーや紅茶ではなく、ワインやウィスキーといったアルコールを合わせるのが粋と仰る方もいるくらいです

 なので、もし紅茶を合わせるとしたら癖のないストレートが無難でしょう
 市販のダージリンブレンドやセイロンティーと称されているブレンド
 もしくは、それらにお酒を加えたスピリッツティー
 あとはドイツの老舗ブランド「ロンネフェルト」のフレーバーティー「アイリッシュモルト」なんかいいかもしれない
 
 だけどやっぱり、コーヒーのほうが合うと思います
 なんせ、イタリアは圧倒的にコーヒー・エスプレッソ文化ですからね 
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