フレジエ

文字数 1,843文字

 国産の苺はだいたい12月、クリスマスを見越して市場に出回ります
 もっとも、その時期は製菓業界が買い占める形になりますので価格は高め 
 それから1月、2月は他の行事に取られてあまり目立たず――
 果たして、3~4月の春を旬として、あらゆるお店で苺が看板メニューとして並びます
 特にホテルなどではビュッフェやアフタヌーンティーなど苺尽くしとなり、沢山の女性客を夢中にさせています
 
 そして、6月になるとほとんどがアメリカ産のイチゴに
 違いを簡単に説明しますと、国産はイメージ通り小ぶりで可愛らしく、そのまま食べても甘いです 
 一方、アメリカ産は一粒が大きくて少し不格好、酸味が強いので練乳をかけて食べられることが多いかと

 そういった違いがありますので、海外ではジャムやらコンポートといった果物を加工する技術が進んだという説もあります
 言うまでもなく、一番の理由は長期保存ですけどね

 さて、日本で苺といえばショートケーキ
 これに関してはもはや覆しようもないかと
 かつてはバタークリームを使ったあまり美味しくないケーキが主流だったそうですが、今となっては忘れ去られた存在です

 そんなショートケーキの原型とも言われているのが、フランス語で「いちごの苗」を意味するフレジエ
 パティスリーによって様々なバリエーションがありますが、基本的な構成は以下のモノになるかと

スポンジ生地(ジェノワーズ)(フランスではアーモンドペースト(マジパン)が入ることが多い)
さくらんぼの蒸留酒(キルシュ)(シロップと共に上に塗ったり、香りづけに下に入れたり)
・クレーム・ムスリーヌ(カスタードクリーム(クレームパティシエール)+バタークリーム)
・たくさんのイチゴ
 
バタークリーム(クレーム・オ・ブール)とは
 卵と卵黄をしっかりと泡立て、そこに高温(120℃)のシロップを糸を垂らすように加えながら更に泡立てる(名称パータボンブ。高温のシロップにより卵が殺菌されるため、アイスクリームやムースなど様々なベースとして使われる)
 そこにクリーム状に泡立てたバターを少しずつ加えながら混ぜ合わせ、乳化させたもの(分離しやすく作るのが意外と難しい)
 そのままだと、卵臭いからよくアルコールが添加される
 
 ケーキの形としては丸かったり四角かったりといろいろあるけど、多くは2つ割りにした苺の白い断面が見えるようになっているかと

 お味のほうはがっつりと甘く、食べ応えがあります
 スポンジはビチャビチャになるほどシロップが打ってありますし
 クリームはバターがたっぷりな上に材料の半分が実に砂糖
 だからこそ、酸味のあるイチゴや香り高いキルシュが素晴らしく感じられるんですけどね
 
 ただキルシュを多く使っているので、お酒に弱いとかじゃなく洋酒の香りや味が苦手な人は駄目かと思います
 もっとも、お店によっては日本人向けにアレンジしています
 クリームがカスタードクリームと生クリームを合わせたディプロマトだったり、お酒を使用しなかったり
 その辺りは店員さんにうかがえば、答えてくれるかと

 
 では、一緒に飲む紅茶をご紹介
 ケーキと言いますか、クリームが重いのでミルクティーはあまりおすすめできません
 やはり、合わせるのならストレートティー
 紅茶らしい、ディンブラやニルギリは間違いないでしょう
 ダージリンの刺激的な渋みも濃厚なバタークリームにはぴったり
 また、そのダージリンがブレンドされているアフタヌーンティーも同様に合うと思います
 
 フレーバーならケーキと同種の香りで
 今回の場合はイチゴかさくらんぼ
 後者はともかく、前者はイギリスブランドでも多く扱っていますので合わせやすいですね
 
 
 最後に余談ですが、イチゴではなくてフランボワーズを使うと「きいちごの木を意味するフランボワジエ」になります
 日本では、フランスをリスペクトした個人店くらいでしか見かけないですけどね
 そもそも国産苺の味に慣れているからか、日本人はフランボワーズを好まないらしいです
 更にチェーン店のファミレスやカフェだと高確率で冷凍品の為、イメージもあまりよろしくありません(とにかく酸っぱくて形が悪い)
 一応国産もあるのですが、旬が短い上に数も少ないので市場に回ることはほぼなく
※6~9月が旬。秋田、山形、北海道などで生産
 結果、多くが輸入品となります
 ただそれすらもは非常に傷みやすい為、スーパー等の一般市場に並ぶことはないそうです
 ヨーロッパやロシアではポピュラーな果物なんですけどね
 ちなみに日本語で木苺、英語でラズベリー、フランス語でフランボワーズとなります
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