ピーチ・メルバ

文字数 1,487文字

 日本において、桃はそれだけを食すデザート
 初夏に出回る白桃を筆頭にフレッシュな果実をそのままに
 ケーキやタルトに使用する際も加工せず、ただ乗せるだけ――

 そんな桃をメインに据えた一皿がPeche(ピーチ) Melba(メルバ)
(仏語だと、Pêche(ペーシュ) Melba(メルバ)
 時は1892年、ロンドンのホテル・サヴォイのシェフであったエスコフィエが、ある歌姫に捧げた冷たいアントルメです
 
 構成としては難しくなく、ガラスの(クープ)にバニラアイスクリーム
 その上に半割りにした桃のシロップ煮(コンポート)を乗せ
 仕上げに木苺(フランボワーズ)のピュレを注いだもの
※ピュレ:果物などをミキサーにかけて裏ごしたもの

 これをいたく気に入った歌姫がデザートの名前を訊ねたところ、
 「ピーチ・メルバと呼ばせて頂ければ光栄です」
 と、シェフが答えたのが名前の由来とされています

 その歌姫の名前はネリー・メルバ
 そう、これは彼女の名前を模したスペシャリテなのです

 しかし、現代においても基本的にレシピには著作権が存在しません
 その為、このピーチ・メルバという名前は至るところで見られてしまいます
 それどころか構成(レシピ)までも勝手に変えられ、様々なアレンジが加えられる始末
 
 よく見受けられるのはお持ち帰りできるようにアイスクリームの部分をババロアやムースに変え、白ワインか桃のジュレをかけたもの
 基本的にはバニラムースですが、お店によってはチーズや桃のムースといったアレンジも見られます

 次に多いのは桃の氷菓(グラニテ)と白ワインor桃のジュレを加え、より涼しげにより豪華に仕上げたアレンジ
 他にも、アイスクリームまで白桃にした桃づくしなど(白桃のコンポート、白桃のアイスクリーム、白桃のグラニテ、白桃のジュレ)
 様々なアレンジ商品が出回っております

 個人的には白桃のコンポート、アイスクリーム、フランボワーズがあれば文句は言いません
 ですが、生クリームと桃だけでピーチ・メルバを名乗られると、ちょっと困惑
 桃のショートケーキの名前を変えただけじゃないですか、と内心でツッコミを入れたくなります(まぁ、売る為のネーミングでしょうけど……)

 さて、ここからが本題のマリアージュ

 まず、無難なのは桃のフレーバーティーでしょう
 これなら喧嘩することなく『桃』を堪能できます
 また定番のフレーバーですので、多くのお店でお求めいただけるかと 
 事実、F&M(フォートナムメイソン)といったイギリスブランドでも取り扱っております
 
 次にアールグレイなどの柑橘系
 これは良いアクセントになります
 また、ベルガモットの風味はフランボワーズの酸味とも相性がいいです
 
 他にも、ライチのフレーバーも悪くない
 それとジャスミンティーも意外に合う
 どちらも、桃と相性がいいですからね
 そういう意味では最近流行りの台湾茶
 凍頂烏龍茶や名間四季春といった、上品な烏龍茶も悪くないかもしれません
 
 ノンフレーバーなら、桃の上品な香りを邪魔しないもの
 また繊細な甘さを邪魔しないよう、渋みが少ないものがいい
 ただ、せっかく桃をいただくのだから中国のキームンが最適かも

 もっとも、ピーチ・メルバを堪能できるのはカフェかレストランとなりますので、お店がどれほど紅茶を用意しているか、という現実的な問題はありますが
 それでも、ピーチ・メルバにコーヒーを合わせるのはないでしょう
 食後に飲むのならともかく、一緒に飲んでしまったら桃の風味が台無しです
 
 ちなみに、日本の紅茶ブランド「ルピシア」では「ピーチメルバ」という商品を扱っています
 ただ、ベースは紅茶ではなくノンカフェインのルイボスティーとのこと
※桃とクリームの香りは賛否両論とのこと

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