キームン(祁門)~世界三大銘茶~

文字数 1,680文字

 中国安徽(あんき)祁門(きもん)県で作られる紅茶
 アルファベットだと『Keemun』なので、ややこしいことにお店や人によって呼び方が違います
 日本だとキームン、キーマン、キーモンの3パターン
 発音だけでなく、カタカナ表記の際も統一されていないのでご注意を
※イギリスブランドだとキーマン表記が多い

 そして、これが最後の世界三大銘茶
 発祥の地(ルーツ)でありながらも、日本での知名度は一番低いのではないでしょうか?
 まぁ、結局はない物ねだりということで
 東洋人は西洋の文化に憧れ、西洋人は東洋の文化に心動かされる
 事実、西洋では人気ですしね

 なんでも、東洋的(オリエンタル)な味、異国情緒(エキゾチック)な香りと讃えられているとか
 他にも「中国茶のブルゴーニュ」「紅茶の女王」という異名もあったり、何かと肩書きの多い紅茶です
 特にイギリスではヴィクトリア女王の誕生日に献上され愛された紅茶でもあるとして、女王陛下の誕生日にはキームンを飲む習慣があるという情報も
 個人的には、ヴィクトリア女王といえば喪服用宝飾品(モーニングジュエリー)黒玉(ジェット)のイメージのほうが強いんですけどね

 とまぁ、そういう事情があってキームンには特別な等級(グレード)が設定されているようです

 「特貢」>「貢茶」>「礼茶」>「特茗」>「特級」>「一級」>「二級」>「三級」

 日本で流通しているのは、「特茗」以下のものがほとんどだとか
 実際、私がよく見かけるのは「特級」です
 収穫が5~9月と非常に短く、生産量が少ないのも原因の一つでしょうが(クオリティシーズンは8月)

 上等なモノは、政府高官や国賓への贈答品などに用いられると言われているので……偶然に見かける機会はほとんどないかと
 お値段も天井知らず――50gで1万を超えるものが珍しくないようなので、一般人には手が出せないレベルです
 その香りは高貴でバラや蘭を思わせる芳醇な甘さに満ちて……などと語られるくらいなので、さぞかし素晴らしいのでしょう
 一度でいいですから、味わってみたいものです

 ただ、そんな願いを食い物にするようにキームンには粗悪品が多いとか
 そもそも、上等な茶葉が一般に出回らないので当然といえば当然なんですけどね
 結果、キームン=スモーキーフレーバーというイメージも定着しちゃったり

 ちなみに、このキームンはアールグレイのベースにされている場合も多いです
 ですので、アールグレイからベルガモットの香りを取った味になります(わかりにくいけど)

 ここからは私がよく飲む「特級」のキームンについて

 さすがにバラやランといった香りはしませんが、微かに甘い匂いが漂います
 この香り、人によっては最初に違和感を覚えるかも
 水色は少し赤みがかった紅茶色
 味はしっかりとしながらも、渋みと苦みが他の紅茶と比べると少ないのが特徴
 冷蔵庫でゆっくり冷ましてもほとんど濁らないことから、タンニンの量が少ないのでしょう
※渋みの強いウバなどを冷蔵庫で冷やすと、クリームを入れたコーヒーのように濁る
 なので、アイスティーを大量に作る時には重宝します

 飲み方はストレートが推奨されていますが、ミルクを入れても結構です
 人によっては邪道と言いますが、香りが苦手という方はミルクかアイスティーにして飲むといいでしょう
 
 キームンに限らず、中国紅茶はインドやスリランカのモノとは違った味わいがあります
 その為、初めての場合は感動するか違和感を覚えるかのどちらかになるかもしれません
 
 もっとも、渋みと苦味が少ないことから紅茶が苦手な人にも受け入れやすいです
 加え、食事と一緒に合わせてもgood
 トースト、サンドイッチ、マフィン、スコーン、ベーグル……etc.

 こちらは世界三大銘茶の1つだけあってメーカー(ブランド)品も多数
 フォートナム&メイソン、ロンネフェルト、TWG、ルピシア……etc.
 また「ロイヤルブレンド」の名を冠する商品には、キームンが含まれている確率が高いとのこと

 他にはTWININGSの「プリンス・オブ・ウェールズ」がキームンを使ったブレンドです
※近年ではその表記がなくなり「中国紅茶」となっているようです。ただ、キームンに近い雰囲気は健在
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