マルジョレーヌ

文字数 1,565文字

 ご存知の方はかなりのケーキ通ですね(きっとたぶん)
 今となっては売っているお店も少なく、見かけることすらなくなったこのケーキ
 フランスはヴィエンヌのレストラン「ラ・ピラミッド」のスペシャリテとして、誕生したデセールです

 考案者はフェルナン・ポワン(1897-1955)ということですので、作られたのは20世紀と新しいお菓子
 たぶん、本気で調べたら知っている人が今でもいそうな年代ですね
 この方は1933年から死ぬまで三ツ星を守り抜いた偉大な料理人でもありました

 レストラン自体は今でも存在しているそうですが、一度売却され、所有者が変わった結果、このケーキは置いていないとのこと
 ただ時代的に日本のパティシエの中にも、そのお店で学んだ方がいるそうで(有名な辻調グループの創始者の方とか)
 それでも本来はレストランのお菓子
 なのである程度、手が加わっていると考えていいでしょう(販売店で出す以上、仕方がない)

 ちなみに、こちらはメレンゲ生地を使ったケーキとなります
 いわゆる、ダコワーズやシュクセ――十二分に泡立てたメレンゲにアーモンドとヘーゼルナッツの粉を加えて、焼いたもの
 このマルジョレーヌでは、その生地をうす~く伸ばして使うのが特徴
 これをフォンと言います(重層を作るために薄焼き、薄きりした生地)

 メレンゲ生地を薄焼きにしますと、パリパリの硬い食感(ラングドシャみたい)になるのですが、それをあえてワイン貯蔵室(カーブ)で数日間保存し、柔らかくして使用
 まぁ、日本ではまずしません
 最初から柔らかく焼き上がるよう生地を調整するか、霧吹きなどを使うかです

 そんな上記の生地に挟むクリームは2種類
 1つはホイップクリーム(クレーム・シャンティ)に溶かしバターを加えたモノ(保存性・風味・コクUP)
 もう1つがプラリネクリーム――クレーム・シャンティにプラリネを混ぜ合わせたモノ

※プラリネ:焙煎したナッツ類(アーモンド・ヘーゼルナッツ)を飴掛けして、砕いたもの。今回のようにクリームに入れる際はペースト状まで機械で回す。便利な既製品プラリネペーストもあり。

 構成は一番下にフォン、ガナッシュ(生チョコ)を塗って、フォン
 プラリネクリームをたっぷり、フォン
 シャンティをたっぷり、フォン・ガナッシュ・フォン
 
 簡単に言いますと、薄い生地で挟んだクリームサンド
 一番下と上の生地はガナッシュを挟んだモノを使い、真ん中だけ通常のフォン一枚といった具合
 
 形としては、お店で見かける長方形のケーキ――大きな型で仕込んで、カットして提供されます
 仕上げに、ローマ時代の遺跡でありお店の名前ともなった「ピラミッドの石碑」をかたどるよう、粉糖をかけて完成(型を載せた上から粉糖→型を取るだけ)

 お味はとってもスウィート
 まさに甘くて重い――昔の外国のデザート
 その中で、際立つ特徴は生地の一体感でしょう
 柔らかくしたフォンを使うことで、食感がクリームと同じくらいしっとり
 一方、クリームはプラリネとバター入りだけあって、通常よりは硬い仕上がり

 結果、生地からクリームまでがほぼ同じ食感となり――それでいて、重厚な味わいが感じられる素敵なケーキ
 ただ、少し昔のケーキということで味としては単純です
 クリームも同じ系統が使われており、アクセントとなるモノがないわけですからね

 ですので、合わせる飲み物はコーヒーなんかがいい
 紅茶なら絶対にストレート
 余計な香りもいらない

 生地よりもクリームを食べる感覚が強いのでミルクティーは重い
 香りもバターの風味やプラリネの香ばさを感じる為に邪魔になる

 キャンディ、アッサム、ディンブラ、キームンなどなど

 個人的にはディンブラかキャンディがお勧め
 渋みも少なくて、いかにもな紅茶
 それは自己主張をせず、素直にケーキを楽しませてくれるから―― 
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