クレープ・シュゼット

文字数 1,730文字

 日本だと、クレープは手で持って歩きながら食べることができる手軽なお菓子のイメージが強いと思います
 ですが、フランスにおいてはアントルメ――コース料理のデセールとして、供されることもある立派なデザート
 だって、クレープは温かいお菓子(アントルメ・ショー)にも、冷たいお菓子(アントルメ・フロワ)にもなれるから――

 とはいっても、クレープが誕生したと云われる16世紀ではパンの代わり
 もしくはおやつとされていたようです
※クレープの元となったそば粉のクレープ(ガレット)は12世紀頃には存在した
 その起源はキリスト教の聖燭祭(せいしょくさい)と云われているけど、詳しいことは不明(聖体とされるパンの代わり?)
 
 それが次第に家庭でも作られるようになったのが17世紀頃
 そこから、とんでとんで19世紀
 やっと、タイトルにもあるCrêpe(クレープ) Suzette(シュゼット)は誕生します

 このお菓子、名前はともかくとして実は知っている人も多いかもしれません
「クレープ」「らせん状にむいたオレンジの皮」
オレンジのお酒(グランマルニエorコアントロー)」「火を付ける(フランベ)
 と、単語だけを抜き出せば「あー、あれかっ!」となる世代の方もいるのではないでしょうか?
 一時期、ホテルの代名詞みたいに取り上げられていましたからね

 生み出したのはピーチ・メルバと一緒のエスコフィエ
 ただこの方が作った時にはフランベの工程はなく、焼き上げたクレープをオレンジジュース、オレンジの表皮を入れた溶かしバター、オレンジのお酒で軽く煮込んだものだったとか
 余談ですが、シュゼットのクレープは慣れ親しんだものよりもモチモチとした食感をしています(バターの配合が多い為)
 それを丸く焼き上げたのち、2~3回折ったものを使用
 お店で頼むと、それが1~3枚あるのでボリューミーでお腹いっぱいになります

 さて、そこに文字通り火を付けた人は錯綜としているようですが、一番有名なのはアンリ・シャルパンティエで間違いないでしょう
 もっとも、彼が火を付けたのは偶然であり意図的ではなかったとのこと
 つまり、これも失敗から生まれたお菓子の1つというわけですね
 日本の大手洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティエ」は、その彼にあやかった名前となります(一部店舗でクレープ・シュゼットを提供しています)

 ちなみに、「suzette(シュゼット)」はフランスの女性の名前です
 珍しい名前ではないこともあって、これまたどこの誰だったかは錯綜としています(さる令嬢、貴族の女性、コメディ女優……etc.)

 このクレープ・シュゼットは、ピーチ・メルバと違って年中扱っているお店が多いです
 特にホテルとクレープリーでは定番かつ看板メニューになっています
 やはり、目の前で火を付けるのは見栄えがいいですからね
 
 だけど、このお菓子は苦手という人も少なくはないと思われます
 まず、圧倒的なオレンジ
 次にソースを染み込ませたクレープの食感
 そして、お酒が使われていること
 以上の点で気になるところがある人は、注文しないほうがいいでしょう
 やっぱり、お値段がそこそこしますからね……(たいてい1000円は超える)
 
 では、そろそろ紅茶を合わせてみたいのですが……どうしましょうか?
 クレープ・シュゼット自体が強烈なオレンジですからね
 とりあえず、アールグレイを始めとした柑橘系のフレーバーティーは合うでしょう
 また、ニルギリやキャンディといった個性の弱い紅茶も悪くない
 紅茶にオレンジのスライスを浮かべた「シャリマーティー」というアレンジがありますからね
 反面、ダージリンやウバといった個性の強い紅茶は合わないかも
 
 個人的にはミルクティーがおすすめ
 けど、ミルクと柑橘の組み合わせは好き嫌いがはっきり出るので注意が必要
 茶葉はアッサムかルフナかサバラガムワですが
 シュゼットを食べる時はお店になると思いますので、望んだ茶葉があるかどうかという現実的な問題があります
 
 となると、最適なのはアールグレイ
 それもアイスミルクティーが良い
 アイスティーなら香りも程よく抑えられるし、シュゼットの温かさを強く感じられる
 ミルクを入れれば紅茶の渋みに惑わされず、クレープに染み込んだオレンジの繊細な苦味を堪能できる
 そういった理由から、私はアールグレイのアイスミルクティーをお勧めします
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