第55話 ケース2 死神の足音㉛
文字数 936文字
「これ、勝平兄ちゃんの?」
家系図の末端に、『浜 勝平』の文字が記されている。
里香は横から手帳をのぞき込み、眉根を寄せた。
「いつ、どこで調べたんですか?」
「……掘 茂の自宅に忍び込んで調べた」
目をぱちくりとした里香は、数秒遅れで叫んだ。
「ば、黙れ」
「あ、すいません、すいません。で、でも忍び込んだって泥棒じゃないですか」
「……バレなきゃ問題ない。依頼を達成するための必要措置だ。ま、岩崎と俺の命がかかってるんだ。神様だって許してくれるさ。なあ?」
浜 幸子は、花が咲くようにパッと笑った。
「ええ、幸ノ神が許可します。あなたに文句を言う人がいたら、すぐさま天罰を与えてあげましょう」
来世は頬をひくつかせた。正直、笑えない。
里香も同じことを思ったのだろう。居心地悪そうに身じろぎをした。
「あー、あ! そうそう、何で勝平さんの家系図が茂さんの家に? 茂さんって岩崎さんの会社の社長さんですよね」
「ああ。それについては調べがついている。堀の自宅周辺にいる人々に片っ端から聞き込みをしてみた。するとだ、面白いことが分かった」
来世は言葉を切り、咳払いをしてから再開した。
「堀は、浜 勝平の息子だ。といっても血のつながりはないし、法的には赤の他人だ。浜 勝平は、浜一家殺人事件の後、行方をくらませている。
浜一家殺人事件の容疑者の一人として挙げられているが、結局見つかっていない。が、まさか灯台下暗しとはこのことだ。恐らくほとぼりが冷めたあたりで、帰ってきたのだろうな。彼は、堀 光子という女性と同棲していた。内縁の妻ってやつだ。堀 光子には連れ子がいた。それが、堀 茂。茂は、事実上の父である浜 勝平が設立した会社を継ぎ、現在に至っている」
「あ、あのね」
浜 幸子が興奮した様子で言った。
「勝平お兄ちゃんは生きてるの?」
「いや」
来世は首を振った。
「彼はガンで亡くなったらしい」
浜 幸子は苦しそうに顔を歪めた。
「そっか。……まさか、この街にいたなんて。一度も会えてないのに、もういないんだ。せっかちだな」
少女は里香に駆け寄ると、彼女の胸に顔を埋めた。
「……こっから先の話は、俺の想像が大部分を占める。だが、恐らく当たっている、ような気がする。それでも、聞いてくれるか?」
家系図の末端に、『浜 勝平』の文字が記されている。
里香は横から手帳をのぞき込み、眉根を寄せた。
「いつ、どこで調べたんですか?」
「……掘 茂の自宅に忍び込んで調べた」
目をぱちくりとした里香は、数秒遅れで叫んだ。
「ば、黙れ」
「あ、すいません、すいません。で、でも忍び込んだって泥棒じゃないですか」
「……バレなきゃ問題ない。依頼を達成するための必要措置だ。ま、岩崎と俺の命がかかってるんだ。神様だって許してくれるさ。なあ?」
浜 幸子は、花が咲くようにパッと笑った。
「ええ、幸ノ神が許可します。あなたに文句を言う人がいたら、すぐさま天罰を与えてあげましょう」
来世は頬をひくつかせた。正直、笑えない。
里香も同じことを思ったのだろう。居心地悪そうに身じろぎをした。
「あー、あ! そうそう、何で勝平さんの家系図が茂さんの家に? 茂さんって岩崎さんの会社の社長さんですよね」
「ああ。それについては調べがついている。堀の自宅周辺にいる人々に片っ端から聞き込みをしてみた。するとだ、面白いことが分かった」
来世は言葉を切り、咳払いをしてから再開した。
「堀は、浜 勝平の息子だ。といっても血のつながりはないし、法的には赤の他人だ。浜 勝平は、浜一家殺人事件の後、行方をくらませている。
浜一家殺人事件の容疑者の一人として挙げられているが、結局見つかっていない。が、まさか灯台下暗しとはこのことだ。恐らくほとぼりが冷めたあたりで、帰ってきたのだろうな。彼は、堀 光子という女性と同棲していた。内縁の妻ってやつだ。堀 光子には連れ子がいた。それが、堀 茂。茂は、事実上の父である浜 勝平が設立した会社を継ぎ、現在に至っている」
「あ、あのね」
浜 幸子が興奮した様子で言った。
「勝平お兄ちゃんは生きてるの?」
「いや」
来世は首を振った。
「彼はガンで亡くなったらしい」
浜 幸子は苦しそうに顔を歪めた。
「そっか。……まさか、この街にいたなんて。一度も会えてないのに、もういないんだ。せっかちだな」
少女は里香に駆け寄ると、彼女の胸に顔を埋めた。
「……こっから先の話は、俺の想像が大部分を占める。だが、恐らく当たっている、ような気がする。それでも、聞いてくれるか?」