第15話 ケース1 女子高校生失踪事件⑭
文字数 971文字
部屋に入ると、ムッとした熱気と汗の臭いが女の鼻を刺激した。
入り口の左側に大きなタンスがあり、床に引っかき傷が伸びている。
見るからに重そうなタンスだ。数人の女子高校生が、額に汗を浮かべ、荒く息を吐いている。
(フフ、私が洗脳した子らが、こんなに必死になって動かしたのね)
ゾクゾクとした仄暗い刺激が、背筋を駆け抜け、女はうっとりとした顔で、女生徒たちの頭を撫でていった。
「よくやってくれました。さあ、悪魔はどこに?」
「あそこの床に倒れています」
少女たちが左右に分かれ、床に男女が倒れている姿が露になる。
女は、つぶさに観察する。……呼吸はしているが、ぐったりとした様子で動かない。
「なぜ倒れたのかしら?」
女の問いに、少女たちは首を振るだけだ。理由の分からないザラリと不安に女は苛立ち、さらに追い打ちをかけるように、後方の男が声をかける。
「あーどうでも良いんじゃありませんかね。こいつらは、俺らが片付けとくんで、女たちをトラックに誘導しといてください」
「偉そうな言い草。誰のおかげで、この商売が成り立っているつもり? 下品な男はこれだから嫌いよ」
女はローブをバサリと鳴らしながら、男たちに道を譲った。
ゾロゾロと、五人の男たちが部屋に入り、倒れた二人に近づく。
「おい、この女良い女じゃねえ」
「おいおい、相変わらずのロリコン野郎だ。そのうち、ゴリラ面になっちまうんじゃねえか」
「やめてくれよ。もしそうなったら、隣の部屋でのびてるあいつとこもって、ゴリラの真似をしてやる」
肩を揺らし、男たちはケラケラと笑う。
「なあ、お前ら」
突然、笑いに差し込むように、鋭い声がした。
「うお! お前、やっぱり狸寝入りかよ」
「俺の目を見ろ」
倒れたはずの来世が、立ち上がる。男たちは、蛍光灯に群がる蛾のように、来世の目を見る。妖しく光る青い目は、幽鬼的な魅力があった。
……だからだろう、男たちは、背後に忍び寄る少女たちの手に、壊れたテーブルの脚が握られていることに気付けない。
「ぐあ!」
「てめえ、あ」
五人の男たちは、力なく地面へと前のめりに崩れ落ちた。
「罠だったの! うう、くう」
「待て、逃げるな。里香、こいつらとここにいろ。俺が追う」
入り口の左側に大きなタンスがあり、床に引っかき傷が伸びている。
見るからに重そうなタンスだ。数人の女子高校生が、額に汗を浮かべ、荒く息を吐いている。
(フフ、私が洗脳した子らが、こんなに必死になって動かしたのね)
ゾクゾクとした仄暗い刺激が、背筋を駆け抜け、女はうっとりとした顔で、女生徒たちの頭を撫でていった。
「よくやってくれました。さあ、悪魔はどこに?」
「あそこの床に倒れています」
少女たちが左右に分かれ、床に男女が倒れている姿が露になる。
女は、つぶさに観察する。……呼吸はしているが、ぐったりとした様子で動かない。
「なぜ倒れたのかしら?」
女の問いに、少女たちは首を振るだけだ。理由の分からないザラリと不安に女は苛立ち、さらに追い打ちをかけるように、後方の男が声をかける。
「あーどうでも良いんじゃありませんかね。こいつらは、俺らが片付けとくんで、女たちをトラックに誘導しといてください」
「偉そうな言い草。誰のおかげで、この商売が成り立っているつもり? 下品な男はこれだから嫌いよ」
女はローブをバサリと鳴らしながら、男たちに道を譲った。
ゾロゾロと、五人の男たちが部屋に入り、倒れた二人に近づく。
「おい、この女良い女じゃねえ」
「おいおい、相変わらずのロリコン野郎だ。そのうち、ゴリラ面になっちまうんじゃねえか」
「やめてくれよ。もしそうなったら、隣の部屋でのびてるあいつとこもって、ゴリラの真似をしてやる」
肩を揺らし、男たちはケラケラと笑う。
「なあ、お前ら」
突然、笑いに差し込むように、鋭い声がした。
「うお! お前、やっぱり狸寝入りかよ」
「俺の目を見ろ」
倒れたはずの来世が、立ち上がる。男たちは、蛍光灯に群がる蛾のように、来世の目を見る。妖しく光る青い目は、幽鬼的な魅力があった。
……だからだろう、男たちは、背後に忍び寄る少女たちの手に、壊れたテーブルの脚が握られていることに気付けない。
「ぐあ!」
「てめえ、あ」
五人の男たちは、力なく地面へと前のめりに崩れ落ちた。
「罠だったの! うう、くう」
「待て、逃げるな。里香、こいつらとここにいろ。俺が追う」