第23話 ケース1 女子高校生失踪事件㉒
文字数 950文字
私はそこまでイメージしてみて、やめた。手が痛くて、視線を下に落とすと、ギリギリと握りしめた私自身の拳があった。白くなった指を、ゆっくりと解き、来世さんを見る。
彼は、私と対照的に落ち着いている。薄情者、と言いたいところだったが、きっと違うんだろうな。目をつむると思い浮かぶ。来世さんが、ボロボロになってまで私と冷夏と皆を助けてくれたこと。
知ってるからこそ、うん、暖かい人だと信じられる。
「? どうした。話を進めても良いか?」
「あ、はい。すいません」
「ともかく犯人どもは、不安そうな少女に声をかけ、自身たちが釣った魚だと気付いたら、それとなく霊媒師の話を出す。そうやって、拠点に誘導し、霊媒師の女、ほら俺と戦った女だよ」
「はい、覚えてますよもちろん。……でも、よく分かりません。あの女の人に、冷夏たちは洗脳されたんですよね。
確かに独特の雰囲気がある人でしたけど、だからってあんな何でも言うこと聞く人形みたいに、人を洗脳できる力があるんですか? 正直、信じられないっていうか」
来世さんは、コクリと頷くと、私のコップに紅茶を注いでくれた。
「ごもっともな意見だ。あの女は確かに洗脳する才能があったんだろうさ。でも、お前の友達は失踪してからわずか数日で、洗脳状態になっている。いくら天才的な洗脳の才能があっても、魔法じゃないんだ。普通は難しいと言いたいところだが、カラクリがある」
来世さんは、ミリタリージャケットの内ポケットから何かを取り出して、私の前に掲げた。
粉っぽいものが、透明の袋に入っている。風邪薬かな?
「これは、麻薬だ」
「え! これが」
初めて見た。こわ、普通の薬と見分けがつかないよ。
――え、待って。
私の頭に、電気が流れた。恐る恐る、来世さんに問いかける。
「もしかして、冷夏が飲まされた薬って、これですか?」
「そうだ。最近ここらで流行っている『ドール』という麻薬さ」
凄い衝撃が、心臓を駆け抜けた。麻薬なんて、テレビでしか見ないものだ。正直、自分とはどこか遠い世界の話だと思っていた。けど、冷夏が飲んだ。
そう思うと、地面がどこかに行ってしまったような感覚がして、私はソファのひじ掛けにもたれかかった。
彼は、私と対照的に落ち着いている。薄情者、と言いたいところだったが、きっと違うんだろうな。目をつむると思い浮かぶ。来世さんが、ボロボロになってまで私と冷夏と皆を助けてくれたこと。
知ってるからこそ、うん、暖かい人だと信じられる。
「? どうした。話を進めても良いか?」
「あ、はい。すいません」
「ともかく犯人どもは、不安そうな少女に声をかけ、自身たちが釣った魚だと気付いたら、それとなく霊媒師の話を出す。そうやって、拠点に誘導し、霊媒師の女、ほら俺と戦った女だよ」
「はい、覚えてますよもちろん。……でも、よく分かりません。あの女の人に、冷夏たちは洗脳されたんですよね。
確かに独特の雰囲気がある人でしたけど、だからってあんな何でも言うこと聞く人形みたいに、人を洗脳できる力があるんですか? 正直、信じられないっていうか」
来世さんは、コクリと頷くと、私のコップに紅茶を注いでくれた。
「ごもっともな意見だ。あの女は確かに洗脳する才能があったんだろうさ。でも、お前の友達は失踪してからわずか数日で、洗脳状態になっている。いくら天才的な洗脳の才能があっても、魔法じゃないんだ。普通は難しいと言いたいところだが、カラクリがある」
来世さんは、ミリタリージャケットの内ポケットから何かを取り出して、私の前に掲げた。
粉っぽいものが、透明の袋に入っている。風邪薬かな?
「これは、麻薬だ」
「え! これが」
初めて見た。こわ、普通の薬と見分けがつかないよ。
――え、待って。
私の頭に、電気が流れた。恐る恐る、来世さんに問いかける。
「もしかして、冷夏が飲まされた薬って、これですか?」
「そうだ。最近ここらで流行っている『ドール』という麻薬さ」
凄い衝撃が、心臓を駆け抜けた。麻薬なんて、テレビでしか見ないものだ。正直、自分とはどこか遠い世界の話だと思っていた。けど、冷夏が飲んだ。
そう思うと、地面がどこかに行ってしまったような感覚がして、私はソファのひじ掛けにもたれかかった。