第21話 ケース1 女子高校生失踪事件⑳

文字数 1,417文字

「あの事件が巧妙なところは、SNSを上手く活用している点だ。リンクアプリを使って、不特定多数に女性の死体が写った写真を送る。一見、いたずらのようにしか思えないし、ほとんどがそう思うだろう。

 だが、思い込みが激しい人の場合は、少々事情が異なる。例えば、朝テレビを見ていて、運勢占いの結果が最悪だとする。思い込みが激しい人の中には、その結果を重く受け止め、かなり落ち込んだり、神経質になったりすることもあるだろう」

「あーそれ、心当たりあります。冷夏は、すぐに占いの結果を真に受けて、妙なグッズとか買ったりするんですよ。前なんか」

「どうでも良い。話を進めるぞ」

 私の話を、言葉の刃で一刀両断した失礼男は、戸棚……を開けたっぽい。ガサゴソ聞こえるので、なんとなく泥棒が頑張っている姿が頭をよぎる。

「思い込みの力は凄まじい。そうだな、プラシーボ効果、を知っているか?」

「プラシー……、歯ブラシのCMとか?」

「馬鹿か。プラシーボ効果、別名偽薬効果とも呼ばれるが、本来は薬ではない物を与えたのにも関わらず、不調が和らいだり、治ったりする現象を指す。この現象は、思い込みによっておこる。……おい、そこ、何を笑ってる」

「だって、そんな冗談いうんだもん。いくら私でも騙されませんよ。てか、意外と冗談言うんですね」

 はあ、と特大のため息が聞こえた。

「本当にある現象だ。スマホを持ってるんだから、調べてみろ」

「あ、そうなんですね。……で、その現象が本当だとして、画像とどうつながってくるんですか? え、本当だ」

 私のスマホ画面には、プラシーボ効果についての概要と、その事例が表示されている。

 サッと、スクロールしてみると、飴玉を酔い止め薬と勘違いして治っただの、実際に手術は行っていないのに、手術をしたのと同じような回復がみられたとか、嘘として思えない内容ばかりが目に入る。

 これらの事例がホントかは知らないけど、プラシーボ効果そのものがあるのは間違いないらしい。

「あの、おぞましい死体の画像。あれは、少女たちを誘導する餌だ。画像を見た少女たちは自分たちは呪われたのだ、と思い込んだ。実際に、俺のところに相談に来た親連中が言っていたんだがね、呪いのせいで抜け毛が酷くなったり、倒れてしまったりする子がいたようだ。

 呪い。画像は信じた者にだけ呪いを振りまいた。そして、呪いによって不安になった少女たちは、どうにかしたいと考える。だが、解決策が見つからず、どことなく焦りばかりが募っていくだろう。だから、あの画像が撮影された場所に行ってみたくなる。

 あの画像はな、わざと場所が特定しやすいように撮影されている。翔馬公園が特定できる画像は、お前と俺が持っていた画像のみだったが、実際には数点の画像が確認されている」

「そ、それって、複数の場所で、少女たちを集めていたってことですか?」

「ああ、間違いないだろう。だから、警察もこの事件の解決にてこずったんだ。画像だけしかヒントがないうえ、複数の箇所がある。全部を張り込むほどの人員を動かすには、あまりにも確証がない。

 なぜなら、あの画像は怪しいだけだからだ。犯人が会おうと指示したわけでもなく、ただ不気味な画像があるだけ。少女たちが、画像の撮影された場所に行ったことまでは、警察も掴んでいただろうが、犯人グループは慎重なやつらだった」

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