第3章 第1話
文字数 1,363文字
茅野のヤロー。ぜってー許さねえ。
麻布のグランドに着いたら、
「すんません、腹痛くなって…」
って言って、一人で帰りやがった。
日が沈みかけた慶王大学麻布グランドでは、百人近い選手が練習に励んでいる。その人数にまず圧倒されたのだが、しばらく見ているとその練習の質の高さに、トラは口が顎から外れるほど驚くのであった。
指導者は何人いるのだろう、少なくみても五人はいる。それぞれがグループに分かれ、そのレベルに応じた練習を効率よくこなしている。
選手たちもキビキビした動作で練習をこなし、それは蒲田南中のそれとは全く別のスポーツを見ているかの様である。
先程からずっとグランドではなくスマホを眺めていたあかねが、
「メチャ上手い子が三人いるのだって。F WとM FとD Fに一人ずつ。それぞれ、新田、鴨下、横溝って言う人なのだって。」
「ほお」
「ねえ、何このF Wって?」
「フォワード。攻撃的なポジションのこと」
「ふーん。じゃあM Fって?」
「ミッドフィールダー、中盤のポジション。攻撃も守備もこなす。D Fってのは守備。」
「成る程―。なんかラグビーに似てるわ」
「そうなん」
「あ。試合が始まるみたいよ」
照明が点灯し、グランド上では紅白戦が始まる。トラはスマホで動画撮影を始める。
「どう? 偵察しておいて良かったんじゃない?」
全くその通りだった。もし何も知らずに、初見でこの相手と試合をしていたら、それこそラグビーのスコアとなっていたかも知れない。この相手に九人で挑むことを考えると、吐き気がしてくる。
「勝てそうなの?」
「分からん。とにかくこの動画をオッさんに見せなきゃ」
と言って、トラは約二十分の動画を共有ファイルに落とす。そこにあかねから得た情報を付け足し、大きな溜息をつきながらスマホをポケットにしまう。
「お腹空いたわ。ねえ、何か食べてかない? この辺は美味しいお店がいっぱいあるのよ」
「は? オレ金ねーし」
「いいわ。貸してあげる。安心しなさい、法定利息以下でいいわよ」
「ハア? 女から金なんか借りれるかバーカ」
「はあ? 何その論理。」
「オメーと違ってオレはビンボー人なの。こんな洒落オツなとこで飯食う金なんて持ってねーっつーの」
「そんなことでは彼女出来てもすぐ振られるわよ。男子たるもの常に心と懐に余裕を持って過ごさなければならないのよ」
「… てか、こんなトコで飯食いたがる女とは付き合わねーよ」
「… ふーん」
はー。やっぱチゲーわ、コイツとは生きる世界が。コーヒー一杯八百円の街で飯なんて食えるかっつーの。
やっぱオレにはこんなオンナよりアイツらの方が合ってんだろーな。
「じゃあ、蒲田で食べましょう」
「へ?」
「この辺じゃダメなんでしょ? 地元ならいいんでしょ?」
「ま、まあな」
「じゃ、行こ」
「お、おお」
「言っておくけど」
「な、何?」
「私、別にこの辺で食事したいなんて思ってないから。」
「はい。」
「トラくんと一緒なら何処でもいいから。何なら無人島であなたの取ってきた魚を炭火焼にしたものでも構わないわ」
「…は…い…」
「わかった? その辺のチャラ女と一緒にしないでくださる?」
「承知…」
な、何だこの女…
相変わらず意味不な事ばかり口にして…
オレと一緒ならどこでも?
ざけんなクソビッチ
誰にでもそんなこと言ってんだろが!
麻布のグランドに着いたら、
「すんません、腹痛くなって…」
って言って、一人で帰りやがった。
日が沈みかけた慶王大学麻布グランドでは、百人近い選手が練習に励んでいる。その人数にまず圧倒されたのだが、しばらく見ているとその練習の質の高さに、トラは口が顎から外れるほど驚くのであった。
指導者は何人いるのだろう、少なくみても五人はいる。それぞれがグループに分かれ、そのレベルに応じた練習を効率よくこなしている。
選手たちもキビキビした動作で練習をこなし、それは蒲田南中のそれとは全く別のスポーツを見ているかの様である。
先程からずっとグランドではなくスマホを眺めていたあかねが、
「メチャ上手い子が三人いるのだって。F WとM FとD Fに一人ずつ。それぞれ、新田、鴨下、横溝って言う人なのだって。」
「ほお」
「ねえ、何このF Wって?」
「フォワード。攻撃的なポジションのこと」
「ふーん。じゃあM Fって?」
「ミッドフィールダー、中盤のポジション。攻撃も守備もこなす。D Fってのは守備。」
「成る程―。なんかラグビーに似てるわ」
「そうなん」
「あ。試合が始まるみたいよ」
照明が点灯し、グランド上では紅白戦が始まる。トラはスマホで動画撮影を始める。
「どう? 偵察しておいて良かったんじゃない?」
全くその通りだった。もし何も知らずに、初見でこの相手と試合をしていたら、それこそラグビーのスコアとなっていたかも知れない。この相手に九人で挑むことを考えると、吐き気がしてくる。
「勝てそうなの?」
「分からん。とにかくこの動画をオッさんに見せなきゃ」
と言って、トラは約二十分の動画を共有ファイルに落とす。そこにあかねから得た情報を付け足し、大きな溜息をつきながらスマホをポケットにしまう。
「お腹空いたわ。ねえ、何か食べてかない? この辺は美味しいお店がいっぱいあるのよ」
「は? オレ金ねーし」
「いいわ。貸してあげる。安心しなさい、法定利息以下でいいわよ」
「ハア? 女から金なんか借りれるかバーカ」
「はあ? 何その論理。」
「オメーと違ってオレはビンボー人なの。こんな洒落オツなとこで飯食う金なんて持ってねーっつーの」
「そんなことでは彼女出来てもすぐ振られるわよ。男子たるもの常に心と懐に余裕を持って過ごさなければならないのよ」
「… てか、こんなトコで飯食いたがる女とは付き合わねーよ」
「… ふーん」
はー。やっぱチゲーわ、コイツとは生きる世界が。コーヒー一杯八百円の街で飯なんて食えるかっつーの。
やっぱオレにはこんなオンナよりアイツらの方が合ってんだろーな。
「じゃあ、蒲田で食べましょう」
「へ?」
「この辺じゃダメなんでしょ? 地元ならいいんでしょ?」
「ま、まあな」
「じゃ、行こ」
「お、おお」
「言っておくけど」
「な、何?」
「私、別にこの辺で食事したいなんて思ってないから。」
「はい。」
「トラくんと一緒なら何処でもいいから。何なら無人島であなたの取ってきた魚を炭火焼にしたものでも構わないわ」
「…は…い…」
「わかった? その辺のチャラ女と一緒にしないでくださる?」
「承知…」
な、何だこの女…
相変わらず意味不な事ばかり口にして…
オレと一緒ならどこでも?
ざけんなクソビッチ
誰にでもそんなこと言ってんだろが!