第2章 第8話

文字数 593文字

『トラくん、なんかゴメンね… あんなお父さん初めて見た…』

『気にすんなよ』

『お父さんの土下座は見たくないのだけど(絵文字)』

 既読スルー

『トラくんの土下座も見たくない』

『はあ。』

『何この展開。これではまるで、ロミオとジュリエットじゃない… いやそれより、ウエストサイド物語と言うべきか(絵文字)』

 既読スルー

『ともかく。父がどうなろうと、トラくんは負けちゃダメ』(スタンプ)

『はあ。』

『もうすぐ試合でしょ? 応援行くから。絶対勝つこと(絵文字)』

『来んな』

『いいえ。行きますから』

『マジいいって。要らないって』

『覚えておいて。私、人に指図されるの大嫌いなの』(スタンプ)

『はあ。』

『で。初戦はいつ?何処?』

『…グループライン見ろ』

『そうします。おやすみなさい(絵文字)』(スタンプ)

 ハーーー。
 面倒くせー。

 スマホを放り投げながら寅はベッドに身を投げ出す。これまでに寅は女子と付き合った事は無い。好きな女子はちょくちょく出来たが、告ったこともなく。
 好きでも無い女子から告られるのはしょっちゅうだが、相手にした事はない。そんな訳で彼女を持った事のないどころか、女子とこれ程緊密なやりとりをしたことも、トラにはなかった。

 放り投げたスマホを拾い上げ、さっきのやり取りを読み返す。
 ハーー、面倒くせー。
 でも。
 悪くねえ。

 あかねの容姿を脳裏に思い浮かべ、ゴクリと唾を飲み込む寅であった。
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