第6章 第9話

文字数 1,060文字

 四年後―

「今年から始まりました、全日本U18サッカー選手権、初代王者を決める決勝戦をここ新東京国立競技場からお届けします。解説は元日本代表監督の奥野細倫さん。実況は私、永田真治がお伝えします。奥野さん、いよいよ決勝戦です。まずこの大会の意義について、元日本代表監督の視点でいかがでしょうか」

「はい。コロナ禍で数々の世界大会が中止となり、そんな中で日本国内での育成世代の成長が危惧されている中、高校世代の真の日本一を決めるこの大会の存在は大きいと思います。特に正月の高校選手権のベスト8、クラブユース選手権のベスト8、計十六チームによる真剣勝負のトーナメントは、日本サッカー界の新たなる風物詩となっていくことでしょう。」

「それと、この大会の大きな特徴は、参加チームに賞金が配られる点かと思われますが、いかがでしょうか」

「優勝チームに千万円ですか、当初は高校の部活動に賞金は如何なものかと論議を呼びましたね、しかし全員プロを目指す選手達ですから、世界標準で考えれば妥当なことかと思われます、はい」

「優勝チームに千万円、準優勝チームには五百万円が配られます。U18世代であっても、勝利がお金に直結する、プロとしては当然の市場原理に刮目したシステムによる、第一回大会。世間の注目度も大きく、今日もこの決勝戦には大勢のサッカーファンが押しかけて、ある意味ではこれ迄の日本サッカーの殻を破る試みに大きな声援を送っています。観客席は半分以上埋まっているのではないでしょうか」

「そうですね。それとこれまでと大きく違うのが、ユースチームへの応援、ですかね、ご覧ください、両チームともトップチームの応援団がこのユースチームの応援に駆けつけており、選手達も相当モチベーションが上がっていると思いますよ」

「ピッチ上では選手入場の準備が進んでおります。さて奥野さん。今日の注目選手といえば?」

「はい、川崎フロンティアで言えば、何と言ってもU19日本代表コンビの塩尻、松本の二人でしょう。攻撃の中心である塩尻、守備の中心である松本、どちらも世界規格の優れた選手ですね」

「対するS C東京、年代別代表はいませんが、チームとして非常にまとまった印象を受けますが。」

「そうですね、G K小谷を中心に良く組織された守備陣と高速カウンターを得意とする攻撃陣、非常に魅力あるチームではないでしょうか」

「そう言えば、川崎の松本、東京の小谷、平谷は中学では同じ学校のサッカー部だったそうです。そんな同級対決も大きな話題となっております、さあ間もなく選手入場です」
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