第5章 第4話

文字数 1,141文字

「えーと。二次予選の予定が出ましたー 共用フォルダーにぶちこんどいたんで見てくださーい」

 小谷主将がスマホを弄りながら声を張り上げる。

 いつの間にか月曜日はミーティングの日となり、今日も一美が取ってくれた会議室に皆集まっている。

 先週までと違うのが。
 皆のモチベーションだ。あの慶王に勝ち、蒲田南中は堂々と二次予選に進出した。この予選を勝ち抜けば、六月から始まる全国中学生大会の都予選出場に大変有利になる。

 二次予選は四月末からリーグ戦方式で行われ、一次リーグを勝ち上がった八校をAブロック、Bブロックに分けてそれぞれ四校による総当たり戦となっている。

 上位二チームは都大会へのスーパーシードを獲得する。すなわち、一回勝てば都大会出場が決まるのだ。下位二チームはシードを獲得できず、地区予選を再度戦わねばならなくなる。

 勝ち抜ければ都大会出場に大きく前進となる。だが負けてもまた地区予選を勝ち抜けば良いので、それが最後の大会、な訳では無い。

 だが。彼らのモチベーションは、かつて無い程に昂まっている。

 一次予選勝ち抜けの最有力候補だった慶王中に十一人で勝ち、次の予選からは三人の三年生が出場出来るからである。

「早く試合出てー!」
「それな。こないだの試合、痺れたわー」
「次の試合、いつだよ!」

 新メンバーの佐久、阿南、金は先日の試合をベンチ外で観戦し、心底このチームの一員として自分も戦いたかったのだ。

「と言う訳で。ウチらグループBはウチら以外は皆私立ね。どこも強豪だよね」
 キョンがタブレットを摩りながら真剣な顔で呟く。
「また手分けして偵察行くか?」
「そーだな。今週末とか、行っとくか」
「それがいいと思う。今ウチら選手十五人? マネージャー三人。六人ずつに別れて偵察しよ。えーと、ちょっと待って。コイツらのH P見れば今週末の予定が載ってるかもー」

 おお、流石キョン、との声が多数上がる。
「まず、初戦の芝学苑。えーと土曜日にT M(練習試合)入ってる。場所は同校グランド、だって。誰行ける?」

 そこからはまるで修学旅行のグループ分け状態のカオスと化す。マネージャーはりんりんが芝学、キョンが富士見坂、もえが五反田大付属、と決めてからのオスたちの乱れっぷりは、後ろで見ていた一美も目を丸くするほどであった…

 結局。最終的に。詰まるところ。以下の様に決まる。

芝学苑 りんりん、沢渡(3)佐久(3)茅野(2)大町(2)売木(1)
富士見坂 キョン、松本(3)小谷(3)岡谷(2)木崎(2)平谷(1)
五反田大 もえ、青木(3)阿南(3)金(3)飯森(2)小谷(1)

「ハアハア。これで、文句無い、わね?」
「ゼエゼエ、ああ、こんなもんだろう」
「あー、オレやっぱ芝学にー」
「「「ウッセー黙れ!」」」
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