第3章 第5話
文字数 1,545文字
四月に入り、急に気温が上がった気がする。健太は学校へ向かいながら既に汗をかいている。今日から小谷の弟を含めた四人の新一年生が練習に参加するのだ。
リーグ戦の初戦と二回戦は入学式直後の為、彼らを使うことは出来ない。だが三回戦の慶王戦には十分間に合う。
問題は、つい先月まで四号球で八人制サッカーをしていた彼らがどこまで通用するか、に尽きる。今日の練習を見て、あまりに上級生と格差があるならば、諦めるしかない。
だがそうなれば、到底三戦目の慶王中に勝つことなど不可能だろう。
初戦と二戦目の相手の大井三中と番町中は生徒達が撮ってきた動画を見る限り、何とか九人でも互角の試合が出来そうである。だが慶王中相手には九人では相手にならないであろうー
学校に着きグランドに入ると、四人のちっちゃな生徒が二年、三年生に混じって健太を待っていた… ああ… やはり、小さい… これじゃ…
体格差で彼らはまともなプレーが出来ないだろう、何より体の大きな上級生に対し、ビビってしまうであろう。
どうしたものか。そう頭を悩ませ始めた健太の表情が、始まった練習を見ているうちに徐々に変わっていく。
これは…
先ず小谷の弟のユージ。小さい。細い。だが。抜群のテクニックを持っている。止める、蹴るが非常に正確なのだ! そして、素早い! 何というアジリティ…
「お前の弟、やるじゃないか。確か街クラブでやってたって聞いたけど」
「そっす。四年の時、Jクラブの最終まで行ったんすけど、やっぱあの体格で落とされて。メチャ悔しがって、テクニックだけはぜってー奴らに負けたくねーって、毎日アホみたいに練習してるんですよ。今でも」
「それなら部活じゃなく街クラブで続けりゃ良かったのに…」
小谷が微笑みながら、
「だよねー。でも、ユージのヤツ、アイツと一緒にサッカーしてみたかったんですって。だからウチの部活に入ったって」
と言いながら、ユージとロンドを楽しそうにしているトラを指差す。ロンドとは三〜四人が外で中に一人、外がボールを回し中の鬼がボールを取ったら交代、の練習だ。
ユージは健太が見ている間にボールを取られたことは一度もなく、見事なテクニックで上級生を翻弄している。
「アジリティも凄いな…」
「そーなんっすよ。だからホントは中盤やらせたいんっすけど。でも今のウチならー」
「一番前、だな」
「ですかね」
ボールが集まり人が密集する中盤ではやはり体格差がモノを言うので、あまり人が密集しないF Wの方が今のユージの特性を活かせるだろう。
想定外、が起きている、今目の前で…
三年のD Fコータが、新一年生との一対一でチンチンにされているのだ!
言い換えれば、平谷と言う新一年生がコータとの一対一の練習で、コータを子供扱いしているのだ!
最初コータは笑いながら相手していたのだが、全くボールを奪えず途中から顔色を変えてボールを取りにいくのだが、それでも平谷のボールに触れることもできず、最後には強引に体を捻じ入れてファールすれすれでようやくボール奪取することが出来た。
健太はコータを呼び、
「どうだ、あの一年?」
「いや… マジ、スゲーっす。誰アイツ?」
と逆に聞かれてしまう始末。
健太は平谷を呼び、
「いいね。何処でやってたの?」
「えーと、主に人工芝ですかね」
「… 何処でって… 何処のチームでやってたの?」
「ああ、そっち? S C東京ですけど」
東京が誇るJクラブである。まさか…
「去年、試合の時三回寝坊して遅刻して… クビになりました。テヘっ」
天然モノだ。天然の超大物だ。
「よし。試合の日にはオレん家に泊めてやる。それなら遅刻はないよな」
「うあわー、コーチ天才っすね。その発想はクラブには無いわー。」
と満面の笑みを見せたものだ。
リーグ戦の初戦と二回戦は入学式直後の為、彼らを使うことは出来ない。だが三回戦の慶王戦には十分間に合う。
問題は、つい先月まで四号球で八人制サッカーをしていた彼らがどこまで通用するか、に尽きる。今日の練習を見て、あまりに上級生と格差があるならば、諦めるしかない。
だがそうなれば、到底三戦目の慶王中に勝つことなど不可能だろう。
初戦と二戦目の相手の大井三中と番町中は生徒達が撮ってきた動画を見る限り、何とか九人でも互角の試合が出来そうである。だが慶王中相手には九人では相手にならないであろうー
学校に着きグランドに入ると、四人のちっちゃな生徒が二年、三年生に混じって健太を待っていた… ああ… やはり、小さい… これじゃ…
体格差で彼らはまともなプレーが出来ないだろう、何より体の大きな上級生に対し、ビビってしまうであろう。
どうしたものか。そう頭を悩ませ始めた健太の表情が、始まった練習を見ているうちに徐々に変わっていく。
これは…
先ず小谷の弟のユージ。小さい。細い。だが。抜群のテクニックを持っている。止める、蹴るが非常に正確なのだ! そして、素早い! 何というアジリティ…
「お前の弟、やるじゃないか。確か街クラブでやってたって聞いたけど」
「そっす。四年の時、Jクラブの最終まで行ったんすけど、やっぱあの体格で落とされて。メチャ悔しがって、テクニックだけはぜってー奴らに負けたくねーって、毎日アホみたいに練習してるんですよ。今でも」
「それなら部活じゃなく街クラブで続けりゃ良かったのに…」
小谷が微笑みながら、
「だよねー。でも、ユージのヤツ、アイツと一緒にサッカーしてみたかったんですって。だからウチの部活に入ったって」
と言いながら、ユージとロンドを楽しそうにしているトラを指差す。ロンドとは三〜四人が外で中に一人、外がボールを回し中の鬼がボールを取ったら交代、の練習だ。
ユージは健太が見ている間にボールを取られたことは一度もなく、見事なテクニックで上級生を翻弄している。
「アジリティも凄いな…」
「そーなんっすよ。だからホントは中盤やらせたいんっすけど。でも今のウチならー」
「一番前、だな」
「ですかね」
ボールが集まり人が密集する中盤ではやはり体格差がモノを言うので、あまり人が密集しないF Wの方が今のユージの特性を活かせるだろう。
想定外、が起きている、今目の前で…
三年のD Fコータが、新一年生との一対一でチンチンにされているのだ!
言い換えれば、平谷と言う新一年生がコータとの一対一の練習で、コータを子供扱いしているのだ!
最初コータは笑いながら相手していたのだが、全くボールを奪えず途中から顔色を変えてボールを取りにいくのだが、それでも平谷のボールに触れることもできず、最後には強引に体を捻じ入れてファールすれすれでようやくボール奪取することが出来た。
健太はコータを呼び、
「どうだ、あの一年?」
「いや… マジ、スゲーっす。誰アイツ?」
と逆に聞かれてしまう始末。
健太は平谷を呼び、
「いいね。何処でやってたの?」
「えーと、主に人工芝ですかね」
「… 何処でって… 何処のチームでやってたの?」
「ああ、そっち? S C東京ですけど」
東京が誇るJクラブである。まさか…
「去年、試合の時三回寝坊して遅刻して… クビになりました。テヘっ」
天然モノだ。天然の超大物だ。
「よし。試合の日にはオレん家に泊めてやる。それなら遅刻はないよな」
「うあわー、コーチ天才っすね。その発想はクラブには無いわー。」
と満面の笑みを見せたものだ。