エピローグ

文字数 989文字

 店内の全員がリアルにずっこける。思わずグラスを落としてしまう者も出る始末だ。

「今、ハッキリわかった。アイツ、リアル馬鹿だ」
「ああ。アレがリアル「脳筋男」だ。なんてタチの悪い…」
「ああは成りたくねえな。ちゃんとお付き合いから結婚、とか考えてんだろーけど」
「馬鹿よねえ… 相手の気持ち、年齢、立場とか全然考えてないっしょ?」
「アレじゃトラママ、可哀想過ぎ… アレに比べたら、川崎のG Mは凄かった…」
「アハハー、あの速攻は流石元日本代表! まずは既成事実、ってのが凄かった…」
「それなー。って… ケンタさんじゃ、それは望めまい…」
「脳筋だもんなあ… アレ。スクールの若い人妻とかサポーターから、結構モテてたんだよな」
「でも、一切それに気づかず… ま、それが永野さんの魅力でもあるかもー」

 ホント。成長したな、子供達。店のスタッフのミキが目を細めているとー

「ゴメン、永野さん。それは、ムリ!」

 最早、スマホの秒針が聞こえそうな程、静まり返る。

「貴方とは、これ以上、付き合えません!」

 健太が気を失いそうな真っ白な顔になる。

 全員が一斉に席を立ち、

「「「ちょっと待て!」」」

「「「トラママ、待って!」」」

「そーだそーだ。」

 皆が健太と亜弓を囲む。そして、亜弓が軽く右手を上げて、皆を黙らせる。
 そして、往年のレディースを束ねていた頃の目付きとなる。
 健太はその迫力に凍り付いてしまう。
 その、動けなくなった健太を睨み付けて。

「アタシと、結婚しなさいっ!」

 健太は思わず、

「ハイっ」

 亜弓は唖然とする皆に振り返り、
「いいか、オマエら。喧嘩もプロポーズも、先手必勝な。わかったか!」

「スナック あゆみ」開店以来の大歓声が、いつ迄もいつ迄も、店内に響き渡る。

「先手、必勝。成る程―」
「いや、これは奇襲に近いな。先ずは付き合えない、と言って油断させ、そしていきなりのプロポーズ!」
「流石、蒲田の伝説のレディース。「われ、奇襲に成功せり」ってか?」
「何だっけ、それ?」
「ああ、何かの作戦の合言葉だっけか?」

 あかねが首を振り、
「違うわ。真珠湾攻撃が成功したことを大本営に告げた言葉よ」
 おーーー流石東大生。

「では問題! 真珠湾攻撃に成功、「我奇襲に成功せり」これを暗号にした言葉とは?」

 あかねがトラの頭を押す。

「文一の新一年生、須坂さん、答えは?」

 あかねは誇らしげに。

「トラ トラ トラ!」
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