第4章 第2話

文字数 664文字

 前半が0―0で終了する。

「どうする正樹? 後半も観ていくか?」
「意地悪言わないでくださいよ。それで。タクさんはどの子?」
「なんと言っても、6番。話は聞いていたんだけど、あの子はホントに『俯瞰』しているよ」

 栂はウンウンと頷きながら、
「ですね。こんな公立の部活に、あんな子が埋もれているとは… ったくウチのスカウトは何見てんだか。」

「それと。G K。ガタイもそこそこいいし、何よりコーチングが的確。この年であれだけしっかり指示出せるなんて、大したもんだ」
「キックは全然ですけどね、でもホント身体もいいし。この先ちょっと楽しみですね」

「そうだな。あとはー」
「まあ、こんなもんか、って感じですかね」
「あの、ベンチ入りしてない、一年生。」
「へ? どの子?」

 飯田は指を指し、栂は頷く。
「いや、流石タクさん。メンバー外の子もしっかり見てるなんて… って、アレ、あの子?」
「去年S C東京にいた子じゃないか?」
「ああ、ホントだ… ウチが欲しかったけど、掻っ攫われた… って、なんでこんな中学の部活に? 怪我でもして辞めたのかな?」

 飯田は首を捻りながら、
「さあ、どうしてだろうな。試合には出られないのかな、まだ」
「登録とかあるんでしょうね。ちょっと見たかったなあ」
「おっ後半始まるぞ」

 栂はニヤリと笑いながら、

「で。賭けます? どっちが勝つか?」

 飯田は栂をジロリと睨み、

「アホ。賭けにならねえだろ。」
「プッ そりゃそーか。じゃあ、何対何、で賭けません?」

「2−0」

「じゃ、俺は1−0。ビールですよ、キンキンに冷やしたクラフトビールね!」
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