第1章 第3話

文字数 527文字

「オメーら。この辺で見ねえ顔だなあ。川向こうからか?」

 と野太く低い声が耳に入る。

 金髪が写真を放り投げ、

「何だテメー、それがどーしたよ。狩りの邪魔されたくねーんだけど」

 と言ってその男の前に仁王立ちする。

 他の三人も身構える。

 健太も顔を上げ、その男を見上げる−その瞬間。

 金髪が夜空に舞った。舞い上がった。まるでスローモーションの様に両手を大きく広げながら土手の夜空に舞い上がり、やがて砂利道に背中から叩きつけられ、一息呻くと動かなくなる。

 呆然としている三人のうち、最も前に出ていた坊主頭が横に吹っ飛ぶ。どうやら顔を蹴られた様だ。あまりの早さに健太の酔眼ではよく見えなかった。

 残りの二人が後退りし、
「ちょ… 勘弁してくれ… してください…」
「さ、さーせんでした…」

 すっかり戦意消失している。

 男は二人を睨みつけ、一言
「行け」
 と言うと、二人は仰向けに伸びている金髪と坊主頭を抱えながら立ち上がらせ、それぞれ肩を貸して歩き出す。金髪を抱えている小僧がふと思いついた様に、

「ひょっとして、蒲田のトラさん、っすか?」
 
 巨漢の男は野太い声で

「そーだけど」

 二人は真っ青になり、

「も、申し訳ありませんでしたっ」

 と言って怯えながら土手下に消えて行った。
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